最新記事

感染症対策

全米各地のコロナウイルス検査に滞り 「高度な自動化」が裏目に

2020年8月2日(日)19時10分

「あるものを使うだけ」

今月、アーカンソー州議会の指導者らはマイク・ペンス副大統領に書簡を送り、同州の病院では処理能力の10%の検査しか実施できていないと警告した。同州で感染症対策を指揮するナビーン・パティル氏によれば、ロシュ、アボット、セファイド、ホロジックからの主要サプライ品が不足しているという。

ロシュはロイターの取材に対し、同社の自動検査機は、誤判定の抑制、検査要員の削減、より迅速な結果判定を可能にしているという。またロシュでは、製造能力の拡大を進めており、検査キットや機器をどこに送るか「強く意識している」と述べている。

アボットも、製造能力の拡大を進めており、必要とされている場所で検査を行えるよう供給を厳密に管理していると話している。

一部の研究所では、複数のベンダーから自動検査機を購入し、いずれかのベンダーのサプライ品が入手可能であれば検査できるようにして、サプライ品の不足に対処している。だがこれは同時に、最大処理能力以下でしか稼働していないことを意味している。AMPの調査では、研究所の57%が少なくとも3社の機器を使って検査を行っていることが分かった。

ワシントン大学のベアド氏は、「ビュッフェに行って、ありとあらゆる料理の中から1つ選んで取ってくるようなものだ」と話す。同氏が指揮する研究所は、ワシントン州での検査の大半を担っている。

だが今月、30以上の州で感染者が急増するなか、一部の研究所では試薬や使い捨てパーツの入手が困難になり、処理が追いつかなくなっている。

今後数カ月のあいだに、これらの自動検査機とは別に、抗体検査や遺伝子配列解読機器によって検査能力が向上する可能性はある。国立衛生研究所(NIH)は、12月までに少なくとも1日600万件の検査能力を確保するよう企業各社と協力を進めている。

一部の研究所では、複数ステップ検査キットのサプライヤーにも目を向けている。

ニュージャージー州のRUCDRインフィニット・バイオロジックスは、複数ステップ検査により1日5万件の検体を処理できる。アリゾナ州のソノラ・クエストは先日、類似の機器を用いて1日最大6万件の検査を行う計画を発表した。

エボラ出血熱の研究で最もよく知られるカナダの研究者ゲーリー・コビンガー氏は、あらゆる診断はオープンなプラットフォームで行われるべきだと主張している。

「いずれ新たな病原体が発見され、その病原体に対応するカートリッジを企業は十分に供給できなくなる」

「今がまさにそのときではないか」


Allison Martell and Ned Parker(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・新型コロナウイルス、患者の耳から見つかる
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・がんを発症の4年前に発見する血液検査
・韓国、コロナショック下でなぜかレギンスが大ヒット 一方で「TPOをわきまえろ」と論争に


20200804issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年8月4日号(7月28日発売)は「ルポ新宿歌舞伎町 『夜の街』のリアル」特集。コロナでやり玉に挙がるホストクラブは本当に「けしからん」存在なのか――(ルポ執筆:石戸 諭) PLUS 押谷教授独占インタビュー「全国民PCRが感染の制御に役立たない理由」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米戦略石油備蓄は十分、供給不安に対応可能=大統領顧

ビジネス

スペインのサバデル銀、BBVAとの合併案拒否 12

ワールド

仏大統領が中国主席に謝意、コニャック調査巡り「開か

ワールド

フィリピン4月CPI、前年比+3.8%に加速 食品
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 2

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中