最新記事

インドネシア

バリ島、コロナ終息待てずに観光再開 高級リゾートのテレワーク格安プランを提供、ただし国内限定

2020年7月30日(木)20時10分
大塚智彦(PanAsiaNews)

ワーケーションで観光客誘致

首都ジャカルタにある複数の日系観光業者はバリ島での観光再開を受けて新たな観光誘致のキャンペーン「バリ島応援 ワーケーションプラン」を発表した。

「ジャカルタの生活に飽き飽きしていませんか。バリ島で海を眺めながら休息も兼ねテレワークをしてみませんか」と、バリ島のリゾートホテルで仕事をしながらの観光をうたっている。

「最大で68%引きのホテル」もあるとして、苦しい状況にある各ホテルが破格の値段で客室を提供、そこに滞在しながらの仕事を呼びかけているのだ。ジャカルタでは依然としてオフィスや工場は出社人員制限が50%となっており、日系企業などは1週間交代で日本人従業員が在宅と出社のシフト勤務を続けている。

こうした在宅勤務の日本人を対象にした「ワーケーションプラン」では基本が2泊3日で延泊可能、往復の国内線航空運賃(ガルーダ航空エコノミークラス)、バリの空港とホテルの往復送迎車代も込みで、ヌサドゥアのヒルトンホテルが820万ルピア(約6万6000円)、ジンバランのウォーターマークホテルが580万ルピア(約4万6000円)、サヌールのマヤサヌールホテルが770万ルピア(約6万1000円)などと格安になっている(いずれもシングルユースの1人料金)。

「ジャカルタを脱出してリゾートでのテレワークが実現可能」「海を眺めて仕事」というのがうたい文句だけにいずれのホテルも部屋でのWIFI使用(無料)が可能となっている。いずれも8月1日から12月20日までのプランとなっている。

各種のコロナ対策を義務化

インドネシア全土でのコロナ感染拡大が収まる気配のない状況での国内観光客のバリ島観光再開だけに、旅行者にはコロナ検査での陰性結果の証明書取得などの義務が課せられる。

ジャカルタからバリ島・デンパサール空港に向かう国内線航空機に搭乗する場合は、ジャカルタの医療、検査機関でコロナウイルスの迅速抗体検査での陰性を示す英文の証明書の取得と携行などが求められる。同証明書は有効期限が14日間ため、発効日から14日以内にジャカルタに戻る場合はその証明書が有効となるが、期限を超えた場合はバリで同様の証明書を取得しないと復路の航空機には搭乗できないという。

そのほかバリ島でもマスク着用、手洗い励行、3密の回避などジャカルタと同様の保健衛生上のルールに従うことが求められるという。日系の旅行会社ではこうしたコロナ検査証明書の取得の「お手伝い」も有料でおこなっているという。

ワヤン知事は7月31日からの国内観光旅行再開に続けて、9月11日からは海外からの観光客の受け入れ再開を目指すとしており、現在制限下にある外国人の入国制限の緩和もそのころを目途に緩和されるとの見通しを前提にしている。

このためバリ島観光業者は7月31日からの国内観光客再開で準備を進め、9月からの本格的な海外からの観光客を迎え入れる態勢を整えることになる。

もっとも9月上旬までにインドネシアそしてバリ島のコロナ感染状況が好転するかどうかは「神のみぞ知る」状況。「神々の島」と呼ばれるバリ島でこれまでに何度も多数派ヒンズー教徒による「コロナ撲滅」を祈念する祈祷集会が開かれたが、今後も神頼みの日々が続くことになりそうだ。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など


【関連記事】
・コロナ危機で、日本企業の意外な「打たれ強さ」が見えてきた
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・がんを発症の4年前に発見する血液検査
・インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体放置 謎だらけの事件にメディア騒然


20200728issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月28日号(7月21日発売)は「コロナで変わる日本的経営」特集。永遠のテーマ「生産性の低さ」の原因は何か? 危機下で露呈した日本企業の成長を妨げる7大問題とは? 克服すべき課題と、その先にある復活への道筋を探る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:気候変動で加速する浸食被害、バングラ住民

ビジネス

アングル:「ハリー・ポッター」を見いだした編集者に

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中