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大切な人との「別れ」に苦しむ人へ──カリスマゲイ精神科医が授ける自分を取り戻す処方箋

2020年7月21日(火)14時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

時の流れに任せず自分を癒やすには「書き出す」

「配偶者の死」は、人生に起こるライフイベントの中で最もストレス度の高いイベントであるとされている。ある調査によれば、夫が妻に先立たれた場合、1年以内の自殺率が66倍も上昇するという。妻が夫に先立たれた場合は10倍で、いずれにせよ大きな上昇が見られる。

こうしたデータが語るように、死別は精神的に非常に衝撃の大きい出来事だ。だが、Tomy氏によれば、永遠に続くと思えるような別れのつらさも苦しみも、けっして永遠ではない。時間が掛かっても、苦しみは徐々に快方に向かう。過去の記憶は時間が経つほどに詳細が削られていく。なぜなら、新しい経験がデータとして蓄積されていくからだ。残った記憶も、生々しさが次第に薄れていく。

苦しみには終わりがある。そして、心が癒えていくプロセスを知識として知っておくことは、自分がいざ当事者になったときの救いとなる。これがまず本書を著すにあたって、Tomy氏が読者に伝えたかったことだという。

とはいえ、すぐに癒えるものでない以上、当事者がつらい日々を過ごすことに変わりはない。そこで、単に時間に身を任せるだけでなく、楽になるための手段として、本書では「書き出す」という方法を紹介している。

まず「いまつらいことは何か」と自問し、思いつく限りの答えを書き出す。出てきた答えを「症状」「考え・感情」「行動」の3つに分類する。そして、「考え・感情」「行動」に分類されたそれぞれを、つらい順に並べて、それぞれについての解決方法を考え、書き出す。

考えついた解決方法はできそうなものから実際に試してみて、そのうえで自分の状態を客観的に観察する。こういう、アプローチと検証をくり返すことで、自分にとって効果的な癒しかたが見えてくる。

書き出すことには多くのメリットがあるとTomy氏は説明する。自分自身の話を聞いてあげる「セルフ傾聴効果」、気持ちや考えを整理できる「セルフフィードバック効果」、さらに、過去の記録を振り返ることで状態が良くなっていることに気づける「セルフメモリー効果」。

こうしたことの積み重ねで、着実に前に進んでいるという自信と、未来への展望を持てるようになる。

別れを乗り越える方法に正解はないけれど

『別れに苦しむ、あなたへ。』は、大切な人との別れを経験した後、自分の身に起こる異変と、そこからの回復のプロセスについて解説するだけではなく、精神科医である著者が診てきたケーススタディーも多数、紹介している。

例えば、「彼が事故で急逝し、心が追いついていかない。生きていることさえつらい」という相談に対しては、まず「ただそこにいるだけでじゅうぶん」とし、そのうえで自分にとって負荷のかかることは避け、いちばん自分が楽な状況を作るようアドバイスする。

<参考記事:笑顔の裏で心はグレー、「ほほ笑み鬱」はほかの鬱病より危ない

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