最新記事

感染症対策

コロナウイルスの主要ワクチン候補、治験で有望な結果 実用化の期待高まる

2020年7月21日(火)11時50分

世界で新型コロナウイルス感染拡大が続く中、3つの主要なワクチン候補について有望な治験結果が報告された。写真はワクチンのイメージ画像。4月撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

世界で新型コロナウイルス感染拡大が続く中、20日は3つの主要なワクチン候補について有望な治験結果が報告された。いずれも免疫システム反応を引き起こすことが確認されており、新型コロナに対する安全で有効なワクチンへの期待が高まった。

ただ、開発中のワクチンによって、60万人あまりの死者をこれまでに出した新型コロナの世界的大流行(パンデミック)が終息に向かうかどうかは不明なままだ。ワクチンが安全に新型コロナ感染症やその重症化を防げると証明するには、一段と大規模な治験が必要になる。

英製薬大手・アストラゼネカと英オックスフォード大学が共同開発中のワクチンの初期臨床試験(治験)結果では、2回の投与を受けた被験者全員に免疫反応が確認された。深刻な副作用は出なかった。

中国カンシノ・バイオロジクス(康希諾生物)と人民解放軍の軍事科学院が共同開発しているワクチンの中期治験でも、安全性が確認されたほか、1回の投与を受けた健康なボランティア508人の大半で免疫反応が起きた。

被験者の約77%に発熱や注射部位の痛みなどの副作用が出たが、重篤なものはなかったという。

アストラゼネカとカンシノのワクチンはともに、アデノウイルスをベクター(遺伝子の運び手)として利用する。どちらも研究結果は英医学誌ランセットで報告された。

米ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生学大学院のワクチン専門家、 ナオール・バルジーブ氏とウィリアム・モス氏はランセットに「両治験の結果は総じて類似しており、有望だ」とコメントした。

ただ、カンシノのワクチン候補の治験では、同ワクチンで使われるアデノウイルスに感染したことがある被験者は免疫反応が弱いという結果が再び示されており、研究者らは克服すべき「最大の障害」とした。

一方、独バイオ製薬ベンチャーのビオンテック<22UAy.F>と米製薬・ファイザーが共同開発中の、メッセンジャーRNA(mRNA)と呼ぶ遺伝子を使う別のタイプのワクチンについて、ドイツでの小規模な治験で得られた追加データが公表された。

未査読の研究論文によると、60人の健康な成人を対象にした治験で、2回の投与を受けた被験者は体内でウイルスの働きを中和する抗体をつくることが確認された。米国での初期治験と同様の結果となった。

先週には米モデルナが開発中のコロナワクチンについて、米国の研究者チームが、初期段階の研究で安全性が示されたほか、健康なボランティア45人全員に免疫反応が見られたとする報告書を公表している。

世界保健機関(WHO)の元事務局長補で現在は仏研究機関インセルムに所属するマリー・ポール・キーニー氏は「これら全てのワクチンが体内で抗体をつくるとみられるのは勇気付けられる」と評価。「科学が急速に進展しているという証拠で、良い兆候だ」とした。


【関連記事】
・感染防止「総力挙げないとNYの二の舞」=東大・児玉氏
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・東京都、20日の新型コロナ新規感染168人 東京アラート解除後の感染者が4000人突破
・インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体放置 謎だらけの事件にメディア騒然

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG

ワールド

米上院議員、イスラエルの国際法順守「疑問」

ワールド

フィリピン、南シナ海巡る合意否定 「中国のプロパガ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中