最新記事

感染症対策

コロナ下の米大統領選、予算不足に悩む選挙管理当局 投開票混乱で結果に疑問符つく恐れ

2020年7月18日(土)12時57分

連邦政府のコロナ対応選挙予算は必要な額の1割

連邦議会は3月に可決した「新型コロナウイルス支援・救済・経済保障法(CARES法)」の一環として、各州の選挙実施を支援すべく4億ドルの拠出を承認している。だがブレナン司法センターは、今回のパンデミック下で安全・公正な選挙を行うためには40億ドルが必要と試算しており、連邦政府からの支援はその10分の1にすぎない。

新たな地域に郵便投票システムを導入するには、これまでとは違う投票用紙とセキュリティに配慮した分厚い封筒を調達し、票の仕分け・集計のために高価な機械を新たに購入しなければならない。ブレナン司法センターは、郵送費だけでも6億ドル近く掛かると試算している。

民主党が優位に立つ下院で5月に可決された新型コロナ関連支援法では、州・地方自治体向けの選挙費用支援として36億ドルが計上されている。一部の共和党議員は選挙支援の増額も前向きに検討するとしているが、各州に郵便投票の拡大を認める案には反対しており、共和党支配下の上院で可決される見込みはない。

トランプ氏と共和党は、郵便投票は不正選挙につながりやすく、民主党に有利になると主張する。一方の民主党は、郵便投票の信頼性を貶めようとする行為は、投票所の数が減らされる可能性と併せ、投票率を低下させかねないと訴える。

かつて連邦選挙委員会の共和党メンバーを務め、現在は保守派のヘリテージ財団で活動するハンス・フォン・スパコフスキー氏は、郵便による投票の拡大を試みるよりも、投票所の安全確保に集中するほうが選挙管理当局のコストを抑制できるとみている。

「容易だとは言わないが、こうした人たちが予言しているほど困難にはならないだろう」と、スパコフスキー氏は言う。

選挙向けの連邦補助金を監視する上院議事運営委員会のエイミー・クロブチャー(民主党)上院議員によると、選挙予算は非常に不足しており、たとえば警備のための資金がマスクや消毒剤の購入に充てられているという。

「どちらか一方を選ぶという話ではない。有権者の安全も守らなければならないし、選挙の安全確保も必要だ」と、クロブチャー上院議員は言う。


【関連記事】
・感染防止「総力挙げないとNYの二の舞」=東大・児玉氏
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・東京都、新型コロナ新規感染286人で過去最多を更新 「GoToトラベル」は東京除外で実施へ
・インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体放置 謎だらけの事件にメディア騒然

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪首相、12日から訪中 中国はFTA見直しに言及

ビジネス

ドイツ輸出、5月は予想以上の減少 米国向けが2カ月

ビジネス

旧村上ファンド系、フジ・メディアHD株を買い増し 

ワールド

赤沢再生相、米商務長官と電話協議 「自動車合意なけ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 5
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    米テキサス州洪水「大規模災害宣言」...被害の陰に「…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    中国は台湾侵攻でロシアと連携する。習の一声でプー…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中