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コロナ下の米大統領選、予算不足に悩む選挙管理当局 投開票混乱で結果に疑問符つく恐れ

2020年7月18日(土)12時57分

「壮大な失敗」になるのか

新型コロナの影響で、全米の各都市が今後3年間で計3600億ドルの歳入減が見込まれる。そのため一部の地方自治では、すでに選挙関連予算の縮小を進めている。

6月9日に予備選を実施したジョージア州は、すべての有権者に不在者投票を呼びかける通知を送付した。地元メディアが報じた当局者の話によれば、かかったコストは少なくとも500万ドル。予備選の投票率は過去最高に押し上げられた。ジョージア州は長年、共和党の強固な地盤だが、世論調査によると今年11月の本選では接戦が予想される。

ブラッド・ラフェンスパージャー州務長官(共和党)は州議会議員に対し、医療体制の崩壊危機によって「州の財政がかなり切迫している」とし、11月も不在者投票を呼びかけるには予算が不足していると告げた。ラフェンスパージャー氏はインターネットで呼びかけを行うつもりだ。

ジョージア州郡選挙担当者協会のデイドア・ホールデン副会長は、州内のほとんどの郡は郵送で不在者投票を呼びかけるだけの資金が不足していると語る。

「連邦議会が動かなければ、私たちは壮大な失敗を再び目にすることになるだろう」と、ホールデン氏は言う。無党派のホールデン氏は、アトランタ郊外にある共和党優位のジョージア州ポールディング郡の選挙監視人を務めている。

ペンシルバニア州フィラデルフィアでは歳入の減少に伴い、3月上旬の州政府案で2250万ドルとされていた選挙関連予算を1230万ドルに縮小した。同市における選挙はペンシルバニア州で決定的に重要になる可能性がある。2016年の前回大統領選でトランプ氏が1ポイント以下の僅差で勝利を収めたが、州内で有権者登録している民主党員の約5分の1はフィラデルフィア在住だ。

フィラデルフィアはCARES法に基づく補助金を約75万ドル受け取る見込みだが、市の選挙管理部門のトップを務めるリサ・ディーリー氏によると、6月2日に実施した予備選のために、補助金を上回る額を使ってしまったという。

ラベラ・スコット氏は、オハイオ州ルーカス郡の選挙管理委員長を務めている。オハイオ州は2008年と12年の2度の大統領選で民主党のオバマ氏を選んだが、2016年はトランプ氏を支持した激戦州であり、ルーカス郡はトリードを含む民主党寄りの地域だ。

郡当局はスコット氏に対し選挙関連予算を20%削減するよう要請しており、アクリル樹脂製のフェースガードなど、郡内に設けられる予定の300カ所以上の投票所で用いる安全備品の一部については購入を断念した。

「現実的に、私たちが負担できるコストではない」と、彼女は言う。

スタッフの確保もスコット氏が懸念している点だ。選挙事務に従事していた高齢者からは「今年はウイルス感染が怖いので手伝えない」と謝罪するグリーティングカードが送られてきたという。


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