最新記事

政治

インドネシア大統領、怒りの演説に国民は「責任放棄」と不評 注目されたのは内閣改造という誤算

2020年7月8日(水)20時27分
大塚智彦(PanAsiaNews)

めったに見せない激怒までした演説だったのに狙い通りにならなかったジョコ・ウィドド大統領 REUTERS/Willy Kurniawan

<感染拡大が止まない現状に「ショック療法」で国民の不満をそらそうとした大統領だったが......>

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領が全閣僚を前にして「危機感が欠如している、緊張感をもって迅速に職務に精励するように」と新型コロナウイルスの感染拡大に有効な手立てが打てない政府の現状に怒りと不満を漏らした演説。これが国民の間では不評であることが調査機関によるネット上の反応調査で明らかになった。

6月18日に大統領官邸で行われた閣議の動画(約10分)を大統領府が28日にマスコミに公開。動画ではジョコ・ウィドド大統領が厳しい表情と口調で右手を何度も振りかざして「今は特別に異常な事態にあるという意識、空気が欠如している」「ここにいる閣僚は2億6000万人の国民に対して責任を負っていることを認識するべきだ」「今まで通りの普通の仕事ぶりではいけない、仕事の内容とスピードが求められている」などと閣僚に緊張感とスピード感をもって職務に全力で当たり、未曾有の「コロナ禍」への有効な対策を講じるように呼びかけた。その様子をマスコミは叱咤激励と不満爆発ととらえ一斉に大きく報じた。(関連記事=「激しい剣幕で閣僚に猛省促す大統領の意図は? 新型コロナ対策後手のインドネシア」

ところが演説の中でジョコ・ウィドド大統領が言及した「内閣改造もありうる」という部分にマスコミも国民も経済界なども過剰反応して、内閣改造の時期や閣外に出される閣僚の名前などが最大の関心事となって報じられる事態になっている。

「いつ、誰が閣外追放の対象」という憶測があまりにも飛び交う事態に国家官房長官のプラクティノ氏は「先日の大統領演説は効果があったようで、その後各閣僚は一生懸命職務に取り組んでいる。こうした状況であればあえて内閣改造の理由がみあたらない」と応えたと6日に地元マスコミが伝え、内閣改造に話題と関心が集中している現状の沈静化に乗り出す事態となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ユーロ圏サービスPMI、6月改定値は50.5 需要

ワールド

独サービスPMI、6月改定49.7に上昇 安定化の

ワールド

仏サービスPMI、6月改定49.6に上昇 9カ月ぶ

ワールド

韓国国会、商法改正案可決「コリアディスカウント」解
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中