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少数民族弾圧

ウイグル女性に避妊器具や不妊手術を強制──中国政府の「断種」ジェノサイド

Genocidal Sterilization Plans

2020年7月8日(水)17時30分
エイドリアン・ゼンツ(共産主義犠牲者記念財団・中国研究上級フェロー)

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検問で体温測定を受けるウイグル人男性(クチャ県) DAVID LIU/GETTY IMAGES

カラカシ県の2018年の政府活動報告には、「産児制限違反を厳しく抑制した」結果、「出生数と自然人口増加率は劇的に低下した」とある。2016年から2年間で、同県の自然人口増加率は83%も低下したという。

だが、産児制限違反者を収容所送りにすることは、少数民族の出生率を抑制する戦略の1つにすぎない。第2の戦略は、IUDの事実上の装着強制だ。

ジェノサイドの定義に合致

2018年、中国で行われたIUD装着手術の80%が新疆ウイグル自治区で行われた。2019年までに、南部の4つの自治州では、出産年齢人口(18~49歳)の女性の80%に、「長期的に効果のある産児制限措置」を施す計画をまとめた。ある自治州では、保健当局が認める診断書で医学的なリスクが証明された女性以外は、「ただちに」IUDを装着させなければならないという声明が出された。

だがすぐに、第3の、最も過酷な産児制限措置が施行されるようになった。不妊手術だ。

ごく最近まで、新疆ウイグル自治区では不妊手術はめったに行われなかった。住民の大多数を占めるイスラム教徒の宗教感情に配慮してのことだ。だが、国が一切の宗教活動を迫害し始めると、そのタガも外れた。2018年には中国全体より7倍も多く不妊手術が行われた。

2019年に刑務所や強制労働施設に送られる男性が増えると、大規模な不妊手術強制キャンペーンが始まった。「無料家族計画技術支援サービス」なるこのプロジェクトが、とりわけ積極的に展開されたのが新疆ウイグル自治区南部の州だった。

その目的は、これらの州の2020年の出生数と人口増加率を、2016年のレベルよりも「少なくとも」0.4%下げること。無料の「産児制限手術」には、IUDの装着や人工妊娠中絶、不妊手術が含まれる。そのために2019~20年の2年間で2億6000万元(約39億円)が投じられた。

具体的には、子供が2人以下の女性の一部と、子供が3人以上いる女性の多くまたは全員に不妊手術を施すことが目標だ。ウイグル人が大多数を占めるある県は、3人以上の子供がいる女性に不妊手術を施すことを、2019年の政策目標に掲げている。

中国の2010年の公式統計によると、3~4人の子供を持つウイグル人女性は中国全体に約20%、ウイグル人が大多数を占める地域では36.1%とされている。もしかするとホータン市が、不妊手術の実施目標を34.3%と定めたのは、この統計に由来するのかもしれない。

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