最新記事

少数民族弾圧

ウイグル女性に避妊器具や不妊手術を強制──中国政府の「断種」ジェノサイド

Genocidal Sterilization Plans

2020年7月8日(水)17時30分
エイドリアン・ゼンツ(共産主義犠牲者記念財団・中国研究上級フェロー)

新疆ウイグル自治区では2019年と20年、子供が2人以下(つまり中国の法律ではもう1人持つことができる)の女性が、自発的にIUD装着手術または不妊手術を受けた場合、報奨金を支払うために、15億元(約228億円)の予算を組んだ。

自治区全体の「無料家族計画サービス」の予算と、地元の予算を合わせると、南部地域では18~49歳の既婚女性の約12%(約20万人)に不妊手術を施せる資金が確保された。さらに少なくとも1つの自治州は、国からも補助を受けているから、さらに多くの女性が「無料キャンペーン」の対象になる恐れがある。

こうした措置とIUD装着を組み合わせれば、中国政府はウイグル人の自然人口増加率を、過去20年間の85~95%程度に維持できるだろう。新疆ウイグル自治区は、「産児制限違反ゼロ」を掲げる。つまり国の意に反して生まれる少数民族の子が1人もいないようにするというのだ。

新疆ウイグル自治区は、中国政府の猛烈な同化政策の対象にもなっている。近隣地域から漢族(特に35歳以下の若い家族)を大量に移住させて、少数民族の文化的・人種的な希薄化を図っているのだ。2015~18年に新疆ウイグル自治区に移住してきた漢族は200万人にも上る。地域当局は、漢族男性とウイグル人女性の結婚も奨励している。

こうした事実は、中国政府が国連の定めるジェノサイドの定義の1つである「集団内の出生を防止する措置」を取っている証拠だ。今こそ国際社会は、断固たる対応を取らなくてはならない。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2020年7月14日号掲載>

【関連記事】ウイグル「絶望」収容所──中国共産党のウイグル人大量収監が始まった

【話題の記事】
ウイグル人権法案可決に激怒、「アメリカも先住民を虐殺した」と言い始めた中国
国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉
中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで浮上する第2の道とは
手術されるインターセックスの子供たち トップモデルが壮絶な告白

20200714issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月14日号(7月7日発売)は「香港の挽歌」特集。もう誰も共産党を止められないのか――。国家安全法制で香港は終わり? 中国の次の狙いと民主化を待つ運命は。PLUS 民主化デモ、ある過激派の告白。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中