最新記事

少数民族弾圧

ウイグル女性に避妊器具や不妊手術を強制──中国政府の「断種」ジェノサイド

Genocidal Sterilization Plans

2020年7月8日(水)17時30分
エイドリアン・ゼンツ(共産主義犠牲者記念財団・中国研究上級フェロー)

新疆ウイグル自治区の南西部に位置するカシュガルで警察をからかう子供たち(2017年) KEVIN FRAYER/GETTY IMAGES

<中国政府のウイグル人に対する産児制限は、国連の定めるジェノサイドの定義に該当する>

「達成目標 その1 子宮内避妊器具(IUD)を524人に装着。その2 不妊手術を1万4872人に実施」

これは新疆ウイグル自治区南部に位置する人口253万人のホータン(和田)地区の中心地ホータン市の2019年版家族計画書からの引用だ。隣のグマ県(人口32万2000人)も同年に5970人にIUDを装着し、8064人に不妊手術を実施するという数値目標を掲げている。

中国の少数民族ウイグル人が多く住むこの2地域の当局は、1年間に18~49歳の女性の14~34%に不妊手術を実施する目標を掲げた。人口に対する割合では、1998年から2018年までの20年間に中国全土で実施されたよりも多くの不妊手術が計画されたことになる。

新疆ウイグル自治区保健委員会の文書を見ると、ウイグル人が多数を占める南部全域で、2019年と20年にこうした計画が立てられたようだ。

中国西北部の新疆ウイグル自治区では2017年以降、ウイグル人、カザフ人などテュルク系の少数民族が最大で180万人強制収容所に入れられた。これはホロコースト(ナチスのユダヤ人大虐殺)以降では世界最大規模のマイノリティー排除の暴挙である。亡命ウイグル人らはこの動きを「文化的なジェノサイド(集団虐殺)」と呼ぶ。

文化的どころか紛れもないジェノサイドと言っていい。国連のジェノサイド条約には「集団内の出生を防止することを目的とした措置を課すこと」は集団虐殺に当たると明記されている。私は米シンクタンク・ジェームズタウン財団と共に先月発表した調査報告書で、中国当局が新疆ウイグル自治区でまさにこれに該当する行為を行っている証拠を示した。

強制収容所に入れられていた女性たちが所内で注射を打たれ、その後に月経周期が変わったり、なくなったりしたことを語り始めたのは2018年以降のことだ。収容される前にIUDの装着や不妊手術を強制されたという証言もあった。

公表されたデータを見ると、2018年に新疆ウイグル自治区における人口の自然増加率(出生と死亡の差。移住は含まない)は急減している。

ウイグル文化の中心地であるカシュガル地区とホータン地区の人口の自然増加率は2015年の1.6%から2018年には0.26%と、実に86%も減った。一部のウイグル人地域では、2018年には死亡数が出生数を上回った。2019年には自治区全体の出生率は24%低下し、とりわけ少数民族地域では30~56%も低下した。一方、中国全土の出生率は2018年から19年にわずか4.2%低下しただけだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアはエネルギー停戦ほぼ順守、前線では砲撃続く=

ビジネス

米防衛大手が今年の設備投資拡大、トランプ氏の配当・

ビジネス

訂正-自動運転の米ウェイモ、評価額1260億ドルで

ワールド

米議会、政府閉鎖終結へ合意近い=トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 2
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 3
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 4
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 5
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 6
    エプスタイン文書追加公開...ラトニック商務長官、ケ…
  • 7
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタ…
  • 8
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 9
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 10
    共和党の牙城が崩れた? テキサス州で民主党が数十…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中