最新記事

市場

金価格2000ドルの大台に迫る、不安からの逃避いつまで

Gold Price Forecast, Predictions As Market Hits All-Time High

2020年7月28日(火)17時45分
セレン・モリス

米ドルが信じられない時の金頼み Michael Dalder-REUTERS

<新型コロナ危機の広がりと経済回復の見通しの暗さから、投資家は実物資産である金や銀に資金を移している。つまり、先行きの暗さの反映だ>

金の取引価格は1オンス=1943.93ドルに達し2011年9月に記録されたこれまでの最高値を更新した。その後28日のアジアでの取引では、初めて2000ドルを記録した。

外出禁止令により企業の閉鎖が余儀なくされていた時期に、米国政府は、経済を維持して一時過去された労働者に所得を補償するために多額の資金を借り入れた。

これにより通貨の価値は下がり、相対的に金などの実物資産の魅力が増しているというわけだ。

通貨は紙切れに過ぎないが

投資家たちは、金融資産の魅力が下がる不確実な時代になると、価値保存手段として金を利用する。オンライン取引プラットフォーム「アクティブ・トレーズ」のチーフアナリストを務めるカルロ・アルベルト・デ・カーサはガーディアン紙に対し、金は「通貨市場の混乱に対する保険」と見なされていると述べる。

「通貨は紙に過ぎないが、金と銀はそれ自体に価値がある。だから、現在のような不確実な時代においては優れた投資対象になる」

ニューヨークの投資管理会社バンエックのファンドマネージャー、ジョー・フォスターは、フィナンシャル・タイムズ紙にこう語った。「最近の金の値上がりを牽引しているのは、アメリカにおける新型コロナウイルスの感染拡大と、経済回復には思ったより時間がかかりそうだという厳しい認識だ」

「米ドルが弱含みで、銀価格が高騰しているということは、投機的資金が市場に入っている可能性もある」

「金価格は、実質金利とドルが下がると上がる」と、UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・エーフル最高投資責任者はガーディアン紙に語る。「それに加えて、経済の見通しが不透明で金採掘業者の設備投資を抑えていて金の供給量が限られているため、今後も金価格の上昇は続くとみられる」

オーストラリア・コモンウェルス銀行の採鉱・エネルギー商品アナリストのビベク・ダールは、7月27日にCNBSに対して次のように語った。「現在の勢いからすると、今後数か月で1オンス=2000ドルの大台も突破するだろう。問題はその後どこまで上がるかだ」

「投資家は今神経質になっている。不安心理が強いほど彼らは金に殺到する」と、貴金属ディーラーのジョシュア・ロットバートは言う。

(翻訳:ガリレオ)

<参考記事>迷走続く米国の新型コロナウイルス対策 世界経済に最大のリスク
<参考記事>安倍政権の新型コロナ経済対策しだいで、日本経済の未来が変わる

【話題の記事】
科学者数百人「新型コロナは空気感染も」 WHOに対策求める
中国のスーパースプレッダー、エレベーターに一度乗っただけで71人が2次感染
傲慢な中国は世界の嫌われ者
「中国はアメリカに勝てない」ジョセフ・ナイ教授が警告

20200804issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年8月4日号(7月28日発売)は「ルポ新宿歌舞伎町 『夜の街』のリアル」特集。コロナでやり玉に挙がるホストクラブは本当に「けしからん」存在なのか――(ルポ執筆:石戸 諭) PLUS 押谷教授独占インタビュー「全国民PCRが感染の制御に役立たない理由」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米上院通過の税制・歳出法案、戦略石油備蓄の補充予算

ビジネス

物言う株主、世界的な不確実性に直面し上半期の要求件

ワールド

情報BOX:日米関税交渉の経緯、協議重ねても合意見

ワールド

豪小売売上高、5月は前月比0.2%増 予想下回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中