コラム

安倍政権の新型コロナ経済対策しだいで、日本経済の未来が変わる

2020年04月02日(木)11時58分

テレワークの拡大など、日本企業の姿はすでに変わりつつある MONZENMACHI/ISTOCKPHOTO

<企業支援策を集めただけでは効果は期待できない。今回の財政出動を日本経済の抜本的な変革と成長を促すものにするために必要な視点とは>

新型コロナウイルスの影響が深刻になっていることから、大型の景気対策を求める声が高まっている。これまで政府の動きは鈍かったが、2020年度予算が国会で可決・成立したことから、与党内の調整が加速しているので、近く、大型の経済対策が発表されるだろう。

だが、今回のコロナウイルスによる感染拡大は、経済的に弱い立場の人をさらに追い込むと同時に、世界経済の基本構造を大きく変える可能性がある。政府の経済対策には、弱者対策とコロナ後を見据えた高い戦略性が求められる。

政府・与党内からは、経済対策として様々なプランが浮上しているが、和牛商品券や魚介類商品券の配布など、単なる業界振興策も少なくい。商品券についてはメディアから批判されたことで事実上、断念した形だが、最終的に出てくる経済対策は、各省が実行しやすい企業支援策を集約した形になる可能性もある。大型経済対策がこうした従来型プランに終始した場合、十分な効果を発揮できないかもしれない。

今回の感染拡大は、世界経済に極めて大きなインパクトを与えている。観光やイベントの業界は中小企業やフリーランスが多く、一部の人はこれまでにない深刻な状況に陥っている。大企業も、当然視してきたグローバルなサプライチェーンが機能しなくなり、拠点集約化などの施策は感染リスクを考えると必ずしも効果的とは言えなくなってきた。

有効な緊急対策と、長期的な視点が必要

従来の常識が通用しなくなるなか、どのような経済対策が有効だろうか。ひとつは、深刻な打撃を受けた人に対する一時的な所得補償である。

日本は既に製造業ではなく消費で経済を回す消費国家に変貌しており、家計を守ることは経済対策そのものに通じる。生活困窮者が増えてしまうと、肝心の消費が底割れし、回復させるのが極めて難しくなる。こうした事態を防ぐため、まずは甚大な被害を受けた人を中心に、十分な額の給付を実施する必要があるだろう。

だが、これは緊急対策でしかなく、景気を本格的に下支えするためには、コロナ後を見据えた戦略的な財政出動も併せて実施する必要がある。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英シェル、カザフ新規投資を一時停止へ 政府との係争

ビジネス

ECB、インフレ下振れリスク懸念 ユーロ高を警戒

ワールド

仏外務省、ラング元文化相を8日に呼び出し エプスタ

ワールド

米、新START失効受け新たな軍備管理合意呼びかけ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 2
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 5
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 6
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 7
    「反トランプの顔ぶれ」にMAGAが怒り心頭...グリーン…
  • 8
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 9
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 10
    「エプスタインは悪そのもの」「悪夢を見たほど」──…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story