最新記事

東南アジア

比ドゥテルテ長男、マニラの空港「ニノイ・アキノ」の名称変更を提案 大統領選めぐる動きか

2020年6月26日(金)19時31分
大塚智彦(PanAsiaNews)

このようにフィリピンでは「革命の象徴」「反マルコスの象徴」として国民に親しまれる存在が「ニノイ・アキノ」だった。

ところがドゥテルテ大統領は、歴代大統領が躊躇していたマルコス元大統領の「英雄墓地」への移転埋葬を実現。いまだに一定の政治的影響力を残すマルコス一族と良好な関係を築きつつあることも「マルコス元大統領の政敵だったニノイ・アキノ氏」の名前がついた空港の名称変更提案の一因ではないかとの見方も出ている。

功績者の名前冠した空港

歴史的人物や英雄などを空港の名に冠する例は東南アジアなどでも多く、例えばインドネシアの首都ジャカルタ郊外にある空港は「スカルノ・ハッタ国際空港」と呼ばれ独立時の初代大統領スカルノと初代副大統領ハッタ2人の名前が付けられている。また国際的観光地であるバリ島の「ングラライ国際空港」のングラライは独立戦争の英雄グスティ・ングラライ将軍に由来している。

このほかにもインド・デリーの「インディラ・ガンジー国際空港」、米ニューヨークの「ジョン・F・ケネディ国際空港」、仏パリの「シャルル・ドゴール国際空港」などが有名である。

フィリピン国内でもドゥテルテ大統領の出身地南部ダバオの国際空港は政治家の名前をとって「フランシスコ・バンゴイ国際空港」とも称されている。

マルコス回帰とも関係か

今回の「ニノイ・アキノ国際空港」の名称変更提案について、フィリピン人女性は「なんでニノイ・アキノなの、だってみんなの空港でしょう」と単純に個人名を冠していることに疑問を示し、そのうえで「ニノイは人気ない。まだマルコスの方が人気はある」と率直に話す。

近年、年配層あるいはマルコス時代を知らない若い世代、そしてマルコス元大統領の地元民などを中心にマルコス人気が高まっているとされ、「強い指導者を切望するマルコス回帰現象」の表れとも指摘されている。

これは例えばインドネシアで1998年まで約32年間にわたる長期独裁政権を維持し、民主化運動で崩壊した「スハルト大統領」の時代を懐かしみ強い指導力を発揮する為政者出現を願う「スハルト回帰現象」といわれる動きとおそらく軌を一にしているものといえる。

ただフィリピンではマルコス元大統領の長女エイミー・マルコス氏が上院議員を務めるなど、一族は依然として政界に一定の影響力を残しているが、インドネシアではスハルト一族は弱小政党の党首として残っているにすぎず、その影響力はほとんど残っていないという違いがある。


【話題の記事】
・コロナに感染して免疫ができたら再度感染することはない?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・東京都、新型コロナウイルス新規感染48人を確認 今月5度目の40人超え
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中