最新記事

中国政治

中国の感染症対策改革、専門家は効果を疑問視 「必要なのは検閲の中止」

2020年6月22日(月)17時58分

中国政府は5月下旬、将来のウイルス感染拡大に備えて、同国の疾病対策センター(CDC)の権限を強化する改革を打ち出したが、国内外の一部の専門家からは、効果は限定的ではないかとの声が出ている。写真は北京で21日撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)

中国政府は5月下旬、将来のウイルス感染拡大に備えて、同国の疾病対策センター(CDC)の権限を強化する改革を打ち出したが、国内外の一部の専門家からは、効果は限定的ではないかとの声が出ている。

新型コロナウイルスの流行を巡っては、情報隠蔽とソーシャルメディアの検閲が感染を広げる要因になったとの見方が多いが、今回の改革ではそうした問題に完全には対処できないという。

北京のCDCで副責任者を務めていたYangGonghuan氏は「(地方政府が)感染拡大に伴う社会不安を危惧することが中国の最大の問題だ」と指摘。「このため地方政府は、報道機関や(新型コロナにいち早く警鐘を鳴らし、その後感染により死亡した医師である)李文亮氏のような人物に情報を広めてほしくないと考える」と述べた。

新型コロナは1月初旬に初めて特定されたが、中国当局が湖北省武漢市を封鎖するまで16日かかった。国家衛生健康委員会の馬暁偉主任も今月、ウイルス対策で「一部の問題と欠点が露呈した」ことを認めたが、詳細には触れなかった。

中国政府は、こうした問題に対応するため全国で公衆衛生対策の調整を行うCDCの権限を強化し、CDCが迅速に感染症の発生を特定し、対処できる体制を整えると表明。CDCがこれまでよりも医療機関から情報を入手しやすくする体制を整備する方針も示した。

ただ、こうした一連の改革は、現時点では指針案にとどまっており、施行時期や予算などの詳細は不明。海外では改革に懐疑的な見方が浮上している。

米国のシンクタンク、外交問題評議会の公衆衛生専門家、YanzhongHuang氏は「重症急性呼吸器症候群(SARS)と新型コロナ感染症の感染拡大で非常にはっきりしたのは、政治的な問題と制度上の問題で政府の対応能力が低下したことだ」と述べた。

英国のサザンプトン大学は、武漢市があと2週間早く封鎖されていれば、最大で感染を95%減らせた可能性があると試算。医療専門家からはCDCの独立性をさらに高めるべきだとの声が出ている。

清華大学の法学教授で中国政府のコロナ対策諮問委員会のメンバーを務めたWangChenguang氏は「感染情報を入手したCDCが、独立した客観的な調査を実施できる体制を整える必要がある」と主張。


【関連記事】
・新型コロナ、血液型によって重症化に差が出るとの研究報告 リスクの高い血液型は?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・アメリカが接触追跡アプリの導入に足踏みする理由
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は小幅続伸、景気敏感株に買い TOP

ビジネス

アサヒビール、10月売上高は前年比1割弱の減少 サ

ワールド

トランプ氏は「被害少女知っていた」と米富豪記述、資

ビジネス

SBI新生銀のIPO、農林中金が一部引き受け 時価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中