最新記事

人種差別

ガーナ、人種差別に苦しむアメリカ黒人に「帰還」を呼びかけ

Ghana Minister Invites African-americans to Re-settle in Africa

2020年6月11日(木)15時10分
ブレンダン・コール

急成長を続けるガーナは、アフリカ系アメリカ人のスキルや資金を歓迎する(写真は首都アクラ) Luc Gnag-REUTERS

<奴隷貿易の拠点だったガーナは黒人のふるさと。「今の場所で必要とされていないならとどまることはない、アフリカは皆さんを待っている」>

黒人男性ジョージ・フロイドの拘束死事件を受けて巻き起こった人種差別をめぐる議論は、海を越えて世界中に広まっている。西アフリカのガーナの観光相は、アメリカをはじめ世界各地のアフリカ系市民に「今いる場所に自分が必要とされていないと感じたら」戻ってきなさい、と呼びかけた。

6月5日、ガーナの首都アクラにあるW.E.B.デュボワセンターでは、フロイドの追悼式が開かれた。式に出席したバーバラ・オテンギャシ観光相は、ガーナは人種差別から逃れてきた人々を受け入れると述べた。

ニュースサイトのガーナウェブによれば、オテンギャシは追悼式でこう語った。「私たちは一丸となって、現状を変えていきましょう。人種差別は終わりにしなければなりません。ジョージ・フロイドの死が無駄にならず、世界中で偏見や人種差別をなくすことにつながるよう願っています」

「私たちは今後も、ふるさとに戻ってくる全ての同胞を喜んで受け入れます。ガーナは皆さんのふるさとです。アフリカは皆さんのふるさとです。皆さんを迎え入れる準備はできています」

さらに彼女はこう続けた。「どうぞこの機会にふるさとに戻り、ガーナで生活を築いてください。自分が望まれていない場所にとどまる必要はありません。皆さんには選択肢があります。アフリカは皆さんを待っています」

<参考記事>Black Lives Matter、日本人が知らないデモ拡大の4つの要因

奴隷船から400年

ガーナはかつて奴隷貿易の主要拠点で、ここから大勢の奴隷が船に乗せられて北米に渡った。2019年には記録に残る最初の奴隷船が北米に到着してから400年の節目を迎え、「ガーナ帰還年(イヤー・オブ・リターン)」として音楽祭などさまざまな文化イベントが開催された。

一連のイベントによって大きな経済効果がもたらされたことを受けて、ガーナ政府はさらに、同国への投資を促進するための「帰還を超えて(ビヨンド・ザ・リターン)」と称する戦略を展開している。

ガーナ観光局のアクワシ・アジエマンCEOは6日、米NBCにこう語った。「アフリカ系アメリカ人、そしてアメリカの黒人は大きな購買力と移動の予算を持っている。そろそろ、あなた方の起源であるアフリカに戻ってきてはどうか」

8日には、米政界の中枢とガーナの「つながり」が感じられる一幕もあった。連邦議会議事堂でフロイドの死を追悼するために黙とうを捧げたナンシー・ペロシ下院議長をはじめとする米民主党議員らが身につけていた色鮮やかな幾何学模様のスカーフ(連邦議会黒人幹部会が提供)は、ガーナの民族衣装に使われるケンテと呼ばれる布でつくられたものだった。

<参考記事>「ドイツの黒人はドイツ人とは認められない」 ベルリンで起きた共感のデモ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに

ビジネス

中国の鉄鋼輸出許可制、貿易摩擦を抑制へ=政府系業界

ワールド

アングル:米援助削減で揺らぐ命綱、ケニアの子どもの

ワールド

訂正-中国、簡素化した新たなレアアース輸出許可を付
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中