最新記事

人種問題

「ドイツの黒人はドイツ人とは認められない」 ベルリンで起きた共感のデモ

2020年6月4日(木)16時00分
モーゲンスタン陽子

ベルリンでさまざまな集会やデモが多発している...... REUTERS/Christian Mang

<全米の黒人差別抗議運動に同調して、ヨーロッパ、ドイツでもデモが多発している。これにより新型コロナの感染増加も懸念されている......>

米ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイド氏が警官に殺害された事件を受け全米で抗議運動が拡大しているが、ヨーロッパでもベルリンやロンドン、コペンハーゲンなどで共感と同調を示すデモが行われた。

ベルリンでは5月31日日曜日、約1500人が市街に集結。警察による暴力と人種差別に異議を唱えた。ドイツでは先月より新型コロナ対策措置が徐々に緩和されており、とくにベルリンでさまざまな集会やデモが多発している。「密集・密接」から新たな感染増加を心配する声もある。

100人の登録が1500人に

聖霊降臨の連休であった先週末、ベルリンでは多くのデモが行われた。30日土曜日の夕方にはアメリカ大使館前に約2000人が集結、また31日日曜日には市街に1500人が集まり、警察による暴力と人種差別に抗議した。

日曜日の集会はもともと個人が100人の参加者で事前申請していたものだった(この時点の新型コロナ対策で集会は100人まで)。だが、午前中すでに200人が集結。最終的には1500人までふくれあがり、警備のため出動した警察隊は600人もの救急隊員を伴った。

「黒人のドイツ人」という概念はありえない

歴史教育が徹底しているドイツでは、極右の人種差別主義者が未だに存在する一方で、それを断固として許さない勢力も強い。アメリカの動きに敏感に反応したのもごく自然なことだ。デモ参加者には白人も多い。しかし、「それだけでは不十分だ」とBlack Lives Matter活動家のヨセフィーネ・アプラク氏はツァイト・オンラインのインタビューに答えている。

「たとえばアメリカでは、黒人もアメリカ市民であることは間違いない。アフリカ系アメリカ人という言葉も普通だ。一方、ドイツの黒人は何世代たってもドイツ人とは認められない。多くの人にとってアフリカ系ドイツ人という言葉は矛盾であり、彼らの論理では、同時に黒人とドイツ人であることはあり得ない」と指摘する。

インタビュアーはこれに対し、路上で黒人が撃たれるような国(アメリカ)がモデルになるとは思えない、と反論している。アジア系ドイツ人のようだが、どうもアプラクの論点がピンとこないようだ。アプラクの指摘するのは日常に潜む、アイデンティティそのものを否定するカジュアル・レイシズムのことだ。カナダとドイツの両方で暮らした筆者はアプラクの指摘に共感できる。カジュアル・レイシズムの典型的な質問といえばWhere are you (really) from? 「(本当は)どこの出身?」があるが、これに対してはメルケル首相も直ちに止めるべきだとし、黒人俳優には犯罪者役しかまわってこないなどの問題点を指摘している。

Black Lives Matter の支部はベルリンにもあり、今回だけでなく過去にも抗議デモを行っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 9
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中