最新記事

対中同盟

日米欧「反中」議員連盟発足、中国の「切り離し」を呼びかけ

From U.S. to Japan, Lawmakers Unite to End 'Naive' China Strategy

2020年6月9日(火)13時00分
デービッド・ブレナン

中国建国70周年「国慶節」のパレードで行進する習近平国家主席の山車(2019年10月、北京の天安門広場)  Thomas Peter-REUTERS

<経済発展で民主化するどころか独裁色を強め、新型コロナウイルスの情報隠蔽問題や香港に対する国家安全法の採択などのやりたい放題の中国に辟易し、脅威も感じ始めた政治家たちの中国包囲網の背景には、これまでの過剰な楽観主義はもはや「持続不可能」の共通認識が>

欧米や日本の国会議員が足並みをそろえ、中国問題に対する楽観論を捨て、新たな「戦略的アプローチ」を目指す団体を立ち上げた。「中国に関する列国議会同盟(IPAC)」だ。

公式サイトによれば、IPACは「民主主義国と中国の交渉のあり方の改革に向けて」働くために設立された。アメリカからは共和党保守派のマルコ・ルビオ上院議員らが参加。他にもオーストラリアやカナダ、日本、ドイツ、スウェーデン、ノルウェーの国会議員や欧州議会の議員らが名を連ねる。

中国と民主主義国との関係は以前から順調とは言いがたかった。中国の人権問題や貿易問題に関わる長年の摩擦は、新型コロナウイルスの感染拡大や香港に対する国家安全法の導入を受けてさらに悪化している。

アメリカでは、景気の急速な冷え込みや全米に広がった人種差別抗議デモの中で、ドナルド・トランプ大統領があえて中国に対し強硬な態度を取っている。民主党の大統領候補であるジョー・バイデン前副大統領もそれに負けじと中国に厳しい姿勢を強めている。

IPAC設立を発表するビデオメッセージの中でルビオはこう述べた。「中国共産党支配下の中国は世界にとって大きな障壁だ。われわれIPACは結束し、この大きな課題に手を携えて対応していく」

発展すれば民主化が進むという幻想

かつて欧米諸国の政治家や企業は、中国も経済的に発展すれば、より自由に民主的になっていくと期待していた。1978年に中国が改革開放政策を始めると、外国の資本家たちはうまい汁を吸おうと先を争って中国と仲良くした。2001年のWTO加盟に際し、中国は残った多くの貿易や投資の障壁を撤廃。これが中国の経済成長に拍車をかけた。

だが発展すれば中国は共産党の一党独裁から脱するという期待は裏切られた。中国共産党は1989年の天安門事件で改革主義者たちのデモを弾圧し、その後も先進技術を駆使して全体主義の強化に努めてきた。諸外国が対中関係の見直しを進める中、共産党は悪びれる様子もなく独裁色をますます強めなたら中国を超大国の地位に押し上げようとしている。

英保守党のイアン・ダンカン・スミス元党首は本誌に対し、自由主義国はこれまで、自由市場が中国を民主的改革へと導くという「根拠のない」希望を抱き、中国に対し「無邪気な」アプローチを取ってきたと述べた。

<参考記事>中国は「ウイグル人絶滅計画」やり放題。なぜ誰も止めないのか?
<参考記事>「イギリスが香港のために立ち上がらないことこそ危機だ」パッテン元総督

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米議員、トランプ政権のベネズエラ船攻撃巡り新たな決

ワールド

トランプ氏、バイデン氏の「自動署名文書」を全面無効

ワールド

ヘグセス長官、米軍の「麻薬船」追加攻撃を擁護 生存

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株高を好感 一時400
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 6
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中