最新記事

対中同盟

日米欧「反中」議員連盟発足、中国の「切り離し」を呼びかけ

From U.S. to Japan, Lawmakers Unite to End 'Naive' China Strategy

2020年6月9日(火)13時00分
デービッド・ブレナン

中国政府は、2013年に習近平(シー・チンピン)が国家主席に就任して権力の集中を図るようになる以前から、独裁的な傾向を隠そうともしなかった。それでも民主主義国は中国との取引を続け、中国との経済関係は大いに深まった。以前から中国に厳しい視線を向けてきたスミスに言わせれば、新疆ウイグル自治区における少数民族ウイグル人への弾圧や南シナ海の領有権争い、香港への統制強化やコロナ禍といった近年の問題はいずれも、自由世界と中国政府の関係の「持続不可能性」を示している。

スミスは新型コロナウイルス問題について「中国政府の本質がこれまでになく、非常にはっきりと表に現れるようになった」と指摘する。「世界中の多くの人々が、中国政府は極めて付き合いにくい相手だと認識するきっかけになったと思う」

EUはこれまで、アメリカと比べると穏健な対中政策を採ってきた。トランプが好むおおっぴらな攻撃や陰謀説とも距離を置いてきた。EUの指導者たちは中国との経済関係をチャンスと捉えつつも、バルカン諸国や東欧諸国に対する中国の巨額インフラ投資には警戒の目を向けてきた。

IPACの使命の一つは、国家の独立を守ることにある。「中華人民共和国が発展途上国もしくは新興国の主権を、借款や投資という口実を使って弱体化させることがあってはならない」

欧州の価値観を外交の柱に

中国の人権侵害は、E Uは以前からはっきり非難してきた。欧州議会のミリアム・レクスマン議員(スロバキア選出)は本誌に対し、EUは欧州の価値観を外交政策の基本にしなければならないと語った。「EUの政策は欧州市民の生活はもちろん、人権全般を守るものであるべきだ」

中国からの投資や華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)を初めとする中国企業の進出、そして中国が仕掛ける情報工作やEUおよび加盟国の駐中大使が連名で行った中国紙への寄稿が検閲された問題に対し、欧州の人々はいよいよ懸念を深め、反中感情を強めている。

中国に対する警戒感が強まるほど、E Uのこれまでの穏健な対中政策の矛盾が目立ってきた、とレクスマンは言う。中国は欧州の安全保障さえ脅かす存在だという新たな認識も加わって、対中意識の変化を招いているというのだ。

欧州議会のラインハルト・ブティコファー議員(ドイツ)は、欧州は中国と「元通りには戻れない」と言う。理由は中国の人権侵害や全体主義だが、EU諸国の立場は国によってさまざまで、共通のアプローチに合意するのは難しいと彼は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド機墜落事故、米当局が現地調査 遺体身元確認作

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、円安で買い優勢 前週末の

ビジネス

アマゾン、豪データセンターに5年間で130億ドル投

ワールド

イラン世界最大級ガス田で一部生産停止、イスラエル攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中