最新記事

韓国社会

韓国、環境対策で包装材削減に向けた「セット販売禁止法」で大混乱 発表2日で撤回へ

2020年6月30日(火)19時17分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

報道されてから1日で白紙撤回

もちろん、この法律が報道されると韓国民の不満は爆発した。特に食品は家計にも響く一大事である。オンラインを中心に反対意見が次々と投稿され、ニュース番組でも否定的な報道がされ始めると、韓国政府はすぐに修正案を発表する。さすが、世論に対する瞬発力の速さに驚かされた。

環境省は、「あくまでも自然環境を守るため、ごみを減らす対策の法案である。割引やサービス価格を取り締まる物ではない」「包装せずにビニールテープでおまけを張り付けるなど簡単なものは許可する」という修正案を直ちに発表した。

韓国の会社などに務めたことのある人は知っていると思うが、あの国では重要なことほど突然実行されることが多い。しかし、今回の禁止令は突然すぎで、工場でも対応が間に合わないという反対意見が多く寄せられた。

結局、修正案を発表したにもかかわらず、その後も非難が殺到し、なんとガイドライン発表2日後、一番初めにスクープ報道を流したメディア「韓国経済」が記事にしてからわずか1日という速さでいったんこの法案は白紙となってしまった。

国民の怒りはメディアにも

しかし、この白紙対応に今度は野党から環境省へ不満の声が上がった。未来統合党のスポークスマンであるぺ・ジュンヨンは、白紙となった翌日の論評で「エコ素材を開発した包装業者らまで、政府の一進一退政策に不満を爆発させると、環境省はすぐに収拾資料を発表した」「政府の煮え切らない政策が市場を混乱させている」と批判した。

一方では興味深いことに、一連の問題について一番初めに報道した韓国経済の「単独」スクープ記事が、消費者と小売店側をパニックにさせるような報道をしたのではないかと、歪曲報道批判に発展している。

確かに19日の韓国経済オンラインの見出しは「〔単独報道〕セット割引世界で初めて禁止...ラーメン・ビール価格値上がりか」と消費者の不安をあおり、本来の理由である環境問題については触れていない。さらに、翌日20日の韓国経済紙面では1面に「"インスタントご飯・ラーメンセット"安く売れば不法...お菓子・ビール価格も徐々に値上がりか」となっており、ビールなどはすでに工場からセットになって出荷されるため禁止対象になっていないのにもかかわらず、あたかも値上がりするかのような書き方をしている。

結局、22日に環境省のソン・ヒョングン自然環境政策室長が、緊急記者会見を開き、実施は半年後の来年1月からに変更したことを発表する事態になった。理由は、「環境問題対策としての実施だったのに、再包装禁止対象を分かりやすく説明することにおいて、包装ではなく割引事態を規制するという一部誤解が生じたため」と説明している。これでひと段落ついた形だが、それでも工場や小売店ではこれから6カ月対応に追われることだろう。


【話題の記事】
・東京都、新型コロナウイルス新規感染54人を確認 6月の感染者998人に
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・今年は海やプールで泳いでもいいのか?──検証
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、円は日銀の見通し引き下げ受

ビジネス

アップル、1─3月業績は予想上回る iPhoneに

ビジネス

アマゾン第1四半期、クラウド事業の売上高伸びが予想

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中