最新記事

新型コロナウイルス

「新型ウイルスは実験室で生まれた可能性もある」とする論文が登場

Scientists Shouldn't Rule Out Lab As Source of Coronavirus, New Study Says

2020年5月18日(月)18時25分
ジェイソン・レモン

CDC(米疾病予防管理センター)が描いた新型コロナウイルス CDC/REUTERS

<研究者の大半が主張するように自然発生のものと考えるには、新型コロナウイルスは人間に適応し、発見当初から感染力も強かった。実験室で生まれた可能性を排除するのは早すぎる、と論文は言う>

パンデミック(世界的大流行)を引き起こした新型コロナウイルスについて、実験室で生まれた可能性も排除すべきでないとする論文が発表された。

アメリカのトランプ政権高官や情報機関は新型コロナウイルスの発生源が中国の武漢ウイルス研究所であると主張しているが、中国はそうした見方を陰謀論だと一蹴している。

専門家はおしなべて中国の立場を支持しており、新型コロナウイルスは自然に(たぶん武漢の海鮮市場で)人間への感染力を手にしたと考えている。新型コロナウイルスが遺伝子操作を受けていないことを示す証拠も、そうした見方を補強している。

本誌は複数の専門家に依頼し、問題の論文に目を通してもらった。そして得られた評価は、「この分析に使われた手法は有効性が証明されておらず、主張を裏付けるようなさらなる研究が出てくるまでは結論を急ぐべきではない」というものだった。

問題の論文はブリティッシュコロンビア大学やマサチューセッツ工科大学、ハーバード大学の研究者の共著で、コールドスプリングハーバー研究所が主催するウェブサイト「バイオアーカイブ」で発表された。査読は受けていない。この論文が新型コロナウイルスが何らかの実験室で生まれた可能性(ごく小さな可能性かもしれないが)を主張する根拠は、自然から生まれたものにしては「人間によく適応している」からだという。

(ちなみに同サイトでは掲載論文について「結論として、または臨床や医療に関連した行為を導くものとして」扱われるべきではなく、「確たる情報として報道されるべきでもない」と注意を促している)。

「最初からSARS並みの感染力」

「われわれが観察した限りでは、新型コロナウイルスは昨年後半に初めて発見された時点で、すでにSARSウイルスと同等の人から人に感染する力を備えていたと見られる」と、研究チームは指摘した。他方、「新型コロナウイルスに似ていながら、まだそれほど人間に適応していないウイルスから進化した形跡」を示すものは見つからなかったという。

「感染力の強いウイルスが突如出現したことは大きな衝撃だ。これを期に、ウイルスの起源の確認や近い将来の(類似のウイルスの)再出現の予防に向け、国際協力への機運を高めなければならない」と研究チームは主張した。

この論文によれば、ウイルスの発生源を特定するようなはっきりした証拠は見つかっていない。研究チームはウイルスの遺伝子的構造やサンプルを調べたが、変異した場所が中間宿主の段階だったのか人間の体内なのか、それとも研究施設だったのかは分からなかったという。

だが「実験の過程で遺伝子組み換えによらない前駆体が表れて人に適応した可能性も、念のため検討すべきだ」と研究チームは主張している。

また結論の中で、人から人への感染がどのように始まったかについてさまざまな可能性があるということは、「(ウイルスの)再出現を防ぐためにはそれら全てのシナリオについて警戒する必要がある」と警告した。

<参考記事>CIA:中国はWHOに圧力をかけて世界中のマスクや防護服を買い漁った?
<参考記事>日本の「生ぬるい」新型コロナ対応がうまくいっている不思議

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

国家石油備蓄の放出、政府が鹿児島志布志市の基地に準

ワールド

イラン大統領、自身の発言を「敵が誤解」=国営テレビ

ワールド

王外相、米中対話の重要性強調 イラン情勢巡り軍事行

ワールド

トランプ氏、女子学校攻撃は「イランの仕業」 証拠は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 2
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 3
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 4
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ル…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    大江千里が語るコロナ後のニューヨーク、生と死がリ…
  • 7
    【WBC】侍ジャパン、大谷翔平人気が引き起こした球場…
  • 8
    女性の顔にできた「ニキビ」が実は......医師が「皮…
  • 9
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 10
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中