工場などで増える「コロナ切り」 外国人労働者に生活不安
最初に切られる外国人労働者
日本社会はますます外国人労働者への依存度を強めている。65歳以上が人口の3分の1を占め、生産年齢人口が急速に減少するなか、政府は外国人労働者の受け入れへの門戸を開くため、新たな在留資格を創設するなどした。
2019年10月時点で、日本で働く外国人は160万人以上に上り、2008年の4倍に増えた。
厚生労働省では、コロナウィルスに関連して解雇された外国人労働者の数は体系的に把握していないとしている。それでは現状を把握できないのではないかとのロイターの問いに、同省担当者は「我々としては(日本人と外国人を)分け隔てなくやっており、どちらにせよしっかり就職に向けて支援するというスタンス」だと答えた。
厚労省は今年度の補正予算で、窓口やオンラインでの多言語による外国人労働者に対する雇用相談支援体制の強化に3億7000万円を計上した。
しかし、ほとんどの外国人労働者は、政府に助けを求めない。4月半ば時点でユニオンみえは3-4月に数百件もの労働相談を受けているのに対し、三重労働局では7件の相談しか受けていないとしている。
日系ブラジル人の中尾カオリさんは派遣先だった自動車関連の工場を3月末に解雇され、ユニオンみえに助けを求めた。4人目の子どもを妊娠中だった。
中尾さんはユニオンのメンバーたちと、働いていた三菱重工サーマルシステムズの枇杷島工場と、同社事務所の前で抗議活動を行った。
三菱重工サーマルシステムズはロイターの取材に対し、同社が労働組合法における「使用者」ではないことを理由に「本件に関しコメントする立場にない」と回答した。
中尾さんは「私にお金はもうゼロ。子どもたちのおむつとか食べ物とか、何もできない」と生活の苦しさを語った。
ヤマシタさんは求職活動を続け、数週間前に別の自動車部品工場で募集を見つけた。
雇用は3カ月契約かそれ以下。それでもヤマシタさんは、何もないよりましだと面接を受け、これで職探しも一息つけることを願っていた。
しかし、その後かかってきた電話で、彼のわずかな希望は失われた。
「われわれは最初に切られる」。ヤマシタさんは言う。「それはもう、わかっている」。
村上さくら(翻訳:宮崎亜巳 編集:石田仁志)

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