最新記事

韓国

韓国、セウォル号沈没事故から6年 政争に阻まれ原因究明はいまだ道半ば

2020年5月9日(土)12時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

2014年4月16日、高校生ら多くの乗客が犠牲となったセウォル号沈没事故。 KIM HONG-JI - REUTERS

<4月の総選挙で文在寅率いる革新系与党が勝利した韓国。だが今もなお朴槿恵時代のトラウマがつきまとう>

4月16日でセウォル号沈没事故から6年目を迎えた。大型旅客フェリーの沈没で、修学旅行中だった高校生を含む299名の犠牲者と5名の行方不明者を出した2014年のこの大惨事は、日本でも連日大きく報道された。

事故発生日に合わせて、韓国では4月15日にセウォル号の事故を題材にした映画『幽霊船』が公開された。新型コロナウイルスの影響でアート系映画館が軒並み閉館している中でも、この映画は公開初週末までに累計1万5591名を動員し、その週の単館系映画の観客動員1位を記録している。

この映画は、セウォル号の航路を記録したブラックボックス「船舶自動識別装置(通称AIS)」を、誰かがデータ操作したという情報をもとに、事故に関する情報が政府の意向に添って改ざんされたことを告発した再現ドキュメンタリーだ。やはりセウォル号事故を扱って累計54万人の観客を動員した映画『その日、その海』(2018年)のスピンオフ作品であることも大きな注目を集めた。

多くの映画が描いたセウォル号事故

日本では余り知られていないが、韓国ではこれまでにもセウォル号に関する映画が多数制作されてきた。特に有名な作品といえばドキュメンタリー映画『ダイビング・ベル セウォル号の真実』だろう。2014年の第19回釜山国際映画祭の招待作品となっていたが、上映反対運動が発生。上映は映画祭実行委員会によって強行されたが、翌年の映画祭には韓国映画振興委員会からの支援予算が14億6000万ウォンから8億ウォンに削減されるなど、政治的圧力を受けたことでさらに波紋を広げた。

この映画も、ダイビング・ベルと呼ばれる装置を使って行われたセウォル号の救助活動に関して起きたフェイクニュースや疑惑の告発映画だ。その後、続編となる『After Diving Bell』も発表されている。

また、今年『パラサイト 半地下の家族』が4冠を受賞し世界中が沸いた米国アカデミー賞だったが、実は短編ドキュメンタリー部門にももう1本韓国映画がノミネートされていた。その映画『不在の記憶』は、実際の事故発生当時の通信記録や、被害者となった生徒たちが家族へ送信したメッセージを中心に構成されている。後半では、救助にあたった民間ダイバーたちのその後にもスポットが当てられている。救助活動は、ダイバーたちにも大きなトラウマを残したが、あるダイバーはその後耐えられずに自ら命を絶ってしまったという。

ドキュメンタリー映画ではなく、フィクション映画ももちろん存在する。今年6月5日に日本で公開予定されている映画『君の誕生日』は、遺族である両親を中心に、残されたものの苦しみと戦いを描いた作品だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中