最新記事

日韓関係

「ビザ無効で強制退去?」 新型コロナウイルス対策でも大もめの日韓両政府に巻き込まれた人びと

2020年3月17日(火)19時45分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

留学生同士が連帯

一方で、日本人留学生同士が連帯している例もある。韓国に多く存在する大学別日本留学生会では、入国できなかった留学予定者がいないかツイッターで呼びかけ助けになろうとしている。また、学校側とも連絡を取り合い、情報などを日本語で翻訳しシェアするなど、日本で留学待機している学生たちには心強い存在になっているようだ。さらに、卒業生が、何か困ったことはないかSNS上で手を差しのべるなど、他国の地で頑張る者同士が素晴らしい連係プレーを見せている。

もちろん、この入国規制に伴い韓国人へのビザ問題も深刻化している。11日付けの産業人力公団の発表では、ビザの効力停止で日本への就職決定者150名(10日現在)が入国できずに保留状態だという。また、韓国外語大学は、日本へ留学予定だった韓国人学生47人のうち40人から留学(短期留学も含む)の中止の申し出があった。

今回の問題は、世界へ羽ばたこうとする日韓双方の若者に大きな足かせとなってしまっているようだ。

人気アーティストのいる芸能事務所は株価がダウン

ビザの問題はK-POP業界にも影響が出始めている。韓国芸能界で働く日本人アイドルたちは、ほぼ全員E6-1という通称「有名人ビザ」と呼ばれるビザで滞在している。もちろん、韓国で既に居住している芸能人たちは、今すぐ強制退去する心配はないが、韓国政府によるビザの無効化が発表されると韓国の多くのファンたちからは日本人アイドルを心配する声が寄せられた。

反対に韓国人が日本へコンサートなどを目的とする入国に問題が生じる可能性を配慮し、中止や延期するアーティストが出てきた。K-POP男性グループではStray Kidsが今月21-22日開催予定だったワールドツアー大阪公演を中止、またSUPER JUNIORも今月25・26日のさいたまスーパーアリーナ公演の中止を余儀なくされた。また、来月3~5日開催される予定だった韓流イベント「KCON 2020 JAPAN」も、スケジュールの延期を公表している。

そして入国規制が開始された9日には、TWICEなど日韓で活躍するアーティストが多く所属するJYPエンターテインメントの株が6.69%値下り。これは明らかに、新型コロナウイルスに関係しているとみられる。他にも、代表的な韓流芸能プロダクションであるSMエンターテインメントは6.89%、YGエンターテインメントも5.48%ダウンしている。このように間接的にではあるものの、K-POPへもじわじわと余波が広がっているようだ。

日韓間以外のビザ問題でいえば、3月末クランクインを予定していた韓国映画『交渉(原題)』は今回のコロナの被害者だと言える。現在多くの国で入国規制がかけられている韓国人だが、『交渉』はヨルダンで海外ロケを予定していた。既に一部スタッフは既に現地入りしており、撮影スケジュールの調整に入っている。
他にもレバノンで起きた外交官拉致事件を描いた『被拉(原題)』は、モロッコでの撮影を予定していたが、現在調整中だという。

旅行や留学など、心待ちにしていた人たちも大勢いただろう。しかし、今はお互いに迷惑をかけあわないためにも、ここは一旦みんなで我慢して安全を一番に考えるべきだ。この我慢がきっとコロナの収束に繋がっていると思いながら、今は地球規模で協力し合う必要がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中