最新記事

パロディ動画

「私的な時間に会社をディスる権利を奪わないで」パロディ動画で解雇され裁判に

2020年3月6日(金)17時30分
松丸さとみ

そして今年2月28日、FWCは一転して「全会一致」(英ガーディアン紙)でトレイシー氏の言い分を受け入れ、BPによる不当解雇だったとの判断を下した。

FWC側は、当該シーンが10年以上もの長い間、風刺パロディとして多く使用されてきたことから、映画で描かれているもともとの歴史的な文脈を失っていると指摘。このパロディ動画を知っている人であれば、動画の中で使われたからといってヒトラーやナチスに関係があるとの主張だなどと真剣に受け取ることはないとした。

FWCはまた、14日以内にトレイシー氏を仕事に復帰させ、補償金を支払うようBPに対し提言したという。

「私的な時間に会社の悪口をいう権利を奪わないで」

オーストラリアの労働組合「全豪労働者組合」(AWU)のダニエル・ウォルトン全国書記長は声明の中で、「労働者は、プライベートな時間に同僚と一緒に、会社幹部をネタにして笑うくらいできるべきだ。この権利が失われてしまったら、オーストラリアにとってわびしい日になってしまうだろう」と述べた。

またAWUのブラッド・ガンディ西オーストラリア支部書記長は、「デジタル時代の労働者の権利にとっての勝利であり、常識の勝利であり、オーストラリアらしさである反逆精神にとっての勝利だ」と述べ、「仲間同士での個人的なジョークを理由に従業員をクビにしようというBPの決定は、まったく理解できない」として、FWCの判断を歓迎した。

とはいえオーストラリアの法律事務所マクロウ・ロバートソンのパートナーであるアレックス・ハッチェンス氏はFTに対し、「私的なデジタル・コミュニケーションは、意図した相手以外のもとに簡単に届いてしまう」と指摘。ソーシャルメディアの誤用自体が解雇の根拠となるに十分か否かは、個々の状況や雇用関係などによって異なるだろうとの考えを示している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米ロ首脳が電話会談、プーチン氏はウ和平交渉巡る立場

ワールド

ロ、ウ軍のプーチン氏公邸攻撃試みを非難 ゼレンスキ

ワールド

中国のデジタル人民元、26年から利子付きに 国営放

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、11月は3.3%上昇 約3年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中