最新記事

パロディ動画

「私的な時間に会社をディスる権利を奪わないで」パロディ動画で解雇され裁判に

2020年3月6日(金)17時30分
松丸さとみ

「総統閣下がお怒りです」パロディ動画で解雇された...... (画像は記事のパロディとは別)  BBC Newsnight-YouTube

<英石油大手BPの経営幹部をヒトラーに見立てたパロディ動画を作ったことがもとで解雇され裁判になった......>

パロディ動画をSNS非公開グループに投稿

「総統閣下シリーズ」をご存知だろうか。ドイツで2004年に公開された、実話をもとにした映画『ヒトラー 最期の12日間』(日本では2005年に公開)のワンシーンに、オリジナルとはまったく異なる内容の日本語字幕を付けたパロディだ。

実はこれと同じ映画の同じシーンを使ったパロディ動画は、日本語のみならず英語、スペイン語、中国語などさまざまな言語で存在する。オンライン上に制作用のサイトもあり、作られたパロディ動画は、YouTubeなどの動画共有サイトに数多く投稿されていた(現在は著作権違反の理由でほとんどが削除されている)。

同じシーンを使い、自分が働く会社の経営幹部をヒトラーに見立てたパロディ動画を作ったことがもとで、解雇されてしまった人がいた。オーストラリア西オーストラリア州にある、英石油大手BPの石油精製所で技術者として7年間働いていたスコット・トレイシー氏だ。

当時BPは、労働組合と賃金交渉を行っており、なかなか話がまとまらない状況だった。トレイシー氏は2018年、BPの上層部を映画のヒトラーに見立て、賃上げ交渉の状況を風刺するパロディ動画を作成。Facebook上にあった同僚とのプライベート・グループでシェアした。オーストラリアのニュースサイト「news.com.au」によると、8人がこのビデオを見たという。

「会社幹部をヒトラーとは不適切」

ところが、非公開グループに投稿したはずのこの動画の存在がBPの上層部にバレてしまい、トレイシー氏は解雇されてしまった。英フィナンシャル・タイムズ(FT)によるとBP側は解雇の理由について、動画が同社の代表をナチスとして描いており、同社の行動規範を逸脱した行為だからだとしている。

トレイシー氏は不当解雇として申し立てをしたが、労働関係の争議を専門的に扱う機関、公正労働委員会(FWC)は2019年9月、動画は「不適切で不快」であり、BPによる解雇は不当ではないと結論づけた。FWC側は、「パロディといえば何でも許されるわけではない」との考えを示したという。

この判断にトレイシー氏は不服を申し立てた。FTによるとトレイシー氏は動画について、誰かの気分を害するために作ったものではなく、ユーモアをもってスタッフのやる気を上げるつもりだったと説明している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、サウジへのF35戦闘機売却方針を表明 

ビジネス

ノボ、米で「ウゴービ」値下げ CEO「経口薬に全力

ビジネス

米シェブロン、ルクオイルのロシア国外資産買収を検討

ビジネス

FRBウォラー理事、12月利下げを支持 「労働市場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中