最新記事

新型コロナウイルス

クルーズ船の隔離は「失敗」だったのか、専門家が語る理想と現実

A DAUNTING BUT DOABLE MISSION

2020年3月4日(水)16時00分
國井修(グローバルファンド〔世界エイズ・結核・マラリア対策基金〕戦略投資効果局長)

乗客乗員3000人以上が2週間隔離された(横浜港に停泊するダイヤモンド・プリンセス号、2月7日) KIM KYUNG HOONーREUTERS

<なぜもっと早期に下船させなかったのか、船内の感染症対策が不十分だったのでは?という批判の声に、感染症対策の第一人者が早期に下船できなかった理由を考察。本誌3月10日号の緊急特集「新型肺炎 何を恐れるべきか」より>

日本は、新型コロナウイルスの封じ込めに失敗したのだろうか。

0310-thumb-240xauto-186531.jpgクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号(以下、クルーズ船)は、横浜港で2週間にわたり乗船客を隔離し、2月19日から乗客を下船させたが、2月28日現在、乗客と乗員3711人中700人以上が新型コロナウイルスに感染し、6人の死者が報告されている。

なぜもっと早期に下船させなかったのか、船内の感染症対策が不十分だったのでは? などさまざまな批判が国内外から出ている。

災害対策や危機管理は「最悪の事態を想定する」ことから始まる。これまで世界で流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)、新型インフルエンザ、エボラ熱などの経験を踏まえ、日本はさまざまな水際対策を行ってきたが、それは万全でないとの指摘もある。

さまざまなデータが示す通り、水際対策には意識を高めるなどの効果はあるものの、海外から日本への感染症侵入を防ぐことはほぼ不可能だ。世界のどこかで感染症が流行した場合、日本に来るか来ないか、いかに水際で防ぐかよりも、日本に侵入することを前提に準備と対策を進めなければならない。

今回、船舶の特殊性と感染症の威力を知っている海上自衛隊の専門家や船医と話していて、われわれが共通に感じたことは、大型クルーズ船で1人の乗客が新型コロナウイルスに感染していたことを知った時点で、誰もが「負け戦」を覚悟したことだ。

私も、大型船ではないが、同様に特殊な状況で感染症対策に当たった経験がある。麻疹(はしか)やコレラなど感染症の種類によっては、たった1例発生しただけで、身震いするほどの恐怖を感じるものだ。

2010年に大地震で壊滅的被害を受けたハイチでは、ネパールの国連平和維持活動(PKO)部隊が持ち込んだコレラが瞬く間に蔓延し、66万人以上が感染し、8000人以上が死亡した。アフリカの難民キャンプでは、麻疹が発生するやいなや、ウイルスはキャンプ中に広がり、子供を次々に死に追いやる。

今回は船内である。船は特異な閉鎖環境であるだけでなく、陸上施設にはあり得ない特殊な面、例えば、艦内を循環する空気、上水・下水、豪華客船とはいえ乗務員の活動・生活エリアは狭く入り組んだ環境、居住区においても人と人の距離が近い、などの特徴がある。感染管理において多くの阻害因子があるのだ。

ニュース速報

ビジネス

米、「為替操作国」指定ゼロ 日中韓など11カ国を監

ワールド

中国、日米共同声明に断固反対 台湾や香港は国内問題

ワールド

お知らせ=重複記事を削除します

ワールド

ラウル氏、キューバ共産党トップ退任表明 カストロ時

MAGAZINE

特集:日本を置き去りにする デジタル先進国

2021年4月20日号(4/13発売)

コロナを抑え込んだ中国デジタル監視の実態。台湾・韓国にも遅れた日本が今すべきこと

人気ランキング

  • 1

    女子中学生がバスの扉に足を挟まれ、30秒間も道路を引きずられる──中国

  • 2

    世界の銃の半分を所有するアメリカ人、お気に入りの小型ナイフも持ち歩けない日本に思うこと

  • 3

    ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る

  • 4

    東芝 車谷社長の何が悪いのか?

  • 5

    ブロックチェーン技術の新展開「NFT」が、これほど盛…

  • 6

    日米を代表する2大怪獣が激突 『ゴジラvsコング』勝…

  • 7

    原発処理水の海洋放出「トリチウム水だから安全」の…

  • 8

    仮想通貨で7億円稼いだ「億り人」の意外な素顔と「成…

  • 9

    ふるさと納税は2年で750%増、熊本の人口4000人の町…

  • 10

    新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタ…

  • 1

    青色の天然着色料が発見される

  • 2

    緑豊かな森林が枯死する「ゴーストフォレスト」が米国で広がっている

  • 3

    ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る

  • 4

    ミャンマー市民が頼るのは、迫害してきたはずの少数…

  • 5

    世界の銃の半分を所有するアメリカ人、お気に入りの…

  • 6

    ビットコインが、既に失敗した「賢くない」投資であ…

  • 7

    日本だけじゃない...「デジタル後進国」のお粗末過ぎ…

  • 8

    「頭の切れる人」とそれほどでもない人の決定的な差 …

  • 9

    女子中学生がバスの扉に足を挟まれ、30秒間も道路を…

  • 10

    「日本人なら中国人の3分の1で使える」 クールジャパ…

  • 1

    太平洋上空の雲で史上最低気温、マイナス111度が観測される

  • 2

    観測されない「何か」が、太陽系に最も近いヒアデス星団を破壊した

  • 3

    国際宇宙ステーションで新種の微生物が発見される

  • 4

    「夜中に甘いものが食べたい!」 欲望に駆られたとき…

  • 5

    EVはもうすぐ時代遅れに? 「エンジンのまま完全カー…

  • 6

    30代男性が急速に「オジサン化」するのはなぜ? やり…

  • 7

    孤独を好み、孤独に強い......日本人は「孤独耐性」…

  • 8

    ブッダの言葉に学ぶ「攻撃的にディスってくる相手」…

  • 9

    カミカゼ・ドローンで戦況は一変 米軍「最強」の座…

  • 10

    硬貨大のブラックホールが地球を破壊する

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月