最新記事

世界経済

世界経済を狂わせる新型コロナウイルスの脅威──最大の影響を受けるのは日本

FEARS OF A GLOBAL RECESSION

2020年2月28日(金)17時15分
キース・ジョンソン

韓国・牙山の現代自動車の工場もウイルス禍による供給網の混乱で生産停止に Kim Hong-Ji-REUTERS

<人手不足にサプライチェーンの混乱、新型コロナウイルスの感染拡大でグローバル経済はどこまで落ち込むのか>

新型コロナウイルスの経済への影響が、世界中でさらに顕著になっている。アップルはサプライチェーンの混乱を理由に、1~3月期の売上高予測を達成できない見通しを発表。アジア各国政府も成長見通しを下方修正し、ドイツでは製造業の大幅な減速が懸念されている。

この原稿の執筆時点で、新型コロナウイルスの感染者は世界で7万6000人以上、死者は2200人を超えた。景気回復の光もちらついていた日本やドイツなどにとっては、とりわけ最悪のタイミングだ。

感染拡大の影響は特に自動車産業に顕著に見られ、これが中国国内だけでなく日本や韓国、ドイツに波及。さらにはアメリカにまで達している可能性もある。

中国側は感染者の増加率は鈍化していると言うが、春節(旧正月)後の企業活動の再開が遅れていることで経済は大きな打撃を受けている。自動車など一部の部門は、工場作業員の欠勤やサプライチェーンの停滞、代理店の閉鎖などが原因で、今も開店休業状態だ。

小売りや観光、建設をはじめとするその他の部門も大打撃を受けている。移動制限や感染の不安から、人々がいつもの活動を控えているためだ。エネルギーコンサルティング会社のウッド・マッケンジーは投資家向けのリポートに「2月の中国経済は『利益なし』の状態になる可能性が次第に高まっているようにみられる」と書いた。

日本が最も厳しい状況に?

中国経済の成長率についての予測では、第1四半期には大きく落ち込むものの、政府の景気刺激策によって年内には回復するという見方が当初は多かった。

だが、それも今は変わりつつある。バンク・オブ・アメリカの調査によれば、各国の機関投資家は中国のGDP成長率が今後3年間、5%強にとどまると予想している。既に減速傾向にあった昨年の6.1%を下回り、10年足らず前の2桁成長には遠く及ばない水準だ。

ウッド・マッケンジーの指摘によれば、中国政府は融資拡大や金利引き下げの努力をしているが、それでも景気回復は難しい。各企業は休業中も従業員に給与を支払うことになっているが、収益が圧迫されれば、それも難しくなってくる。そうなれば消費者の可処分所得は減り、消費財の「内需停滞」であるはずの現状が「恒久的な需要の崩壊」になる可能性があると、ウッド・マッケンジーは分析している。

新型コロナウイルスの経済的影響は中国だけでなく、周辺のアジア諸国でも顕著になりつつある。韓国では2月18日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が経済緊急事態を宣言。新型ウイルスが韓国経済に及ぼす被害を食い止めるために、断固たる措置を呼び掛けた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 7
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中