最新記事

サイエンス

これが太陽表面!? 世界最大の望遠鏡で見た驚きの粒々模様

Scientists Snap 'Most Detailed Images of the Sun Ever Taken'

2020年1月31日(金)16時25分
アリストス・ジョージャウ

これまでの5倍の精度で見た太陽表面。太陽物理学はこれから飛躍する? NSO/NSF/AURA

<世界最大の太陽望遠鏡が、これまで誰も見たことがない太陽表面の詳細を明らかにした>

全米科学財団(NSF)が、これまでで最も詳細な太陽表面の画像と映像を公開した。太陽にまつわる謎の解明につながるなど、今後の研究に役立つことが期待されている。

ハワイのマウイ島にあるダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡で撮影されたこれらの画像は、太陽の表面にある小さな粒状の模様をこれまでになく詳細に捉えている。

「太陽を撮影した画像としては、これまでで最も詳細なものだ」と、イノウエ太陽望遠鏡がある米国立太陽天文台(NSO)のクレア・ラフテリー広報担当は言う。「これまでは公共機関が所有する最大規模の太陽望遠鏡でも、大きさ160キロメートル程の構造や特徴までしか捉えることができなかったが、今回の画像は大きさ30キロメートル程の小さなものまで見える。つまりこれまでの5倍以上の精度ということだ」

さらに彼女はこう説明した。「今回撮影された画像や映像によって初めて、太陽表面の構造や特徴を詳しく見ることができる。これらの小さな明るい粒状のものが、コロナと呼ばれる太陽の大気層にエネルギーを放出していると考えられる」

ラフテリーは、今回撮影された粒状構造の画像や映像は、太陽の謎を理解する上でも役に立つかもしれないとも語った。太陽コロナの温度(100万℃を超えるとされる)がなぜ、太陽表面の温度(5500℃前後)よりも高いのかについては、これまで解明されていない。

主鏡の直径は4メートル

ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡は、マウイ島のハレアカラ山頂(標高3055メートル)にあり、2019年に完成したばかり。世界最大の主鏡(対物レンズ)を備えているため、これまで以上に詳細な観測が可能だという。

「主鏡の直径は4メートルある」とラフテリーは言う。「世界で2番目に大きな太陽望遠鏡の主鏡の直径は1.6メートルだ。それよりも飛躍的に大きな主鏡を実現したことで初めて、太陽のより小さな、細かな特徴を調べることができるようになった」

研究者たちは、2018年に打ち上げられたNASAの太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」、NASAと欧州宇宙機関(ESA)の協力により2月8日に打ち上げ予定の太陽観測衛星「ソーラー・オービター」と並んで、このイノウエ太陽望遠鏡もまた、太陽研究に新時代をもたらすものだと言う。

「太陽物理学者にとっては、ワクワクする時代だ」と、NSOのバレンティン・ピレは声明で述べた。「イノウエ太陽望遠鏡は太陽のコロナやその中で起きている磁気活動についての遠隔測定が可能だ。パーカー・ソーラー・プローブやソーラー・オービターと連携して太陽の磁場を観測することで、恒星とその惑星の磁場の関係について多方面からの理解が得られるだろう」

<参考記事>過去70年に観測された10倍規模の太陽嵐が、2600年前に発生していた
<参考記事>中国で次世代の核融合装置「人工太陽」がついに誕生へ

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ドイツ商工会議所、今年の経済成長ゼロと予想 来年0

ビジネス

日産、通期の純損益予想の開示を再び見送り

ビジネス

ドイツ鉱工業生産、9月は前月比+1.3% 予想を大

ビジネス

訂正-独コメルツ銀、第3四半期は予想に反して7.9
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中