最新記事

地球温暖化

「環境難民」を政府は追い返せない──国連人権理事会

Climate Refugees With Credible Fears Cannot Be Turned Away: United Nations

2020年1月21日(火)15時15分
シャンタル・ダシルバ

海面上昇のため住めなくなった家(キリバス・南タラワ地域、2017年) Bryan Woolston-REUTERS

<温暖化の影響で生命を脅かされている人には別の国に移住する権利がある、と事実上認めた画期的判断>

国連人権理事会(UNHRC)は1月上旬、気候変動を理由とした難民申請を各国政府は認めるべき、とする画期的な判断を示した。

人権団体アムネスティ・インターナショナルによれば、きっかけは、南太平洋の島しょ国、キリバス出身の男性イオアネ・テイティオタが、世界で初めて気候変動を理由にニュージーランドへ難民申請を行ったこと。ニュージーランドの最高裁が申請を却下したため、テイティオタは2016年2月、国連人権理事会に申し立てを行った。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によれば、太平洋にある6つの島しょ国は「気候変動の最も深刻な脅威」に直面している。33の島から成るキリバスもその一つで、島民の生活は温暖化による海面上昇に脅かされている。

沈みゆくキリバス


テイティオタは、気候変動の影響は既に深刻だと主張した。出身地の南タラワ地域は海面上昇を逃れて移住してきた人々で過密状態になり、土地の奪い合いや飲料水不足などの問題も起きているという。

脅威があれば「何申請を受け入れるべき」

自分と家族にとって、もはや移住する以外に生きていく手段がないとして、2007年にニュージーランドに移住。2010年にビザが切れたので難民認定を求めたが、キリバスに送還された。

国連人権理事会も、テイティオタの移住を認めた訳ではない。同理事会は、気候変動はテイティオタの安全にとってまだ「差し迫った脅威」とは言えず、彼を本国に送還したニュージーランド政府の判断は間違いではないとした。海面上昇の脅威から逃れるために、キリバス政府が国民を別の場所に移住させるなどの時間はまだあるはずだ、との見解だ。

だがこの判断は同時に「気候変動によって現実に生命が脅かされていれば、外国政府は難民申請を退けるべきではない」という人権理事会の考えを世界に知らしめるものになった。

同理事会はネット上で今回の判断について説明してこう言っている。「気候変動には突発的な事象(たとえば激しい嵐や洪水)と、ゆっくりと進行する事象(たとえば海面上昇、塩害や海岸浸食)があるが、これらはいずれも、人々が危険からの保護を求めて海外に移住する動機になり得る」

<参考記事>「世界一早く水没する都市ジャカルタ」BBC報道にインドネシアが動じない理由とは?
<参考記事>希望のない最小の島国ナウルの全人口をオーストラリアに移住させる計画はなぜ頓挫したか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

印タタ商用車部門、10─12月は60%減益 分社化

ビジネス

午前のドルは153円後半に上昇、「ウォーシュ次期F

ビジネス

商船三井、26年3月期業績予想を上方修正 純利益は

ビジネス

マスターカード10─12月利益・売上が予想超え、人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大胆な犯行の一部始終を捉えた「衝撃映像」が話題に
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 6
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    配達ライダーを飲み込んだ深さ20メートルの穴 日本…
  • 9
    致死率高い「ニパウイルス」、インドで2人感染...東…
  • 10
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 8
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中