最新記事

米外交

暴発寸前のイラン、厄介な北朝鮮──最も危険な2つの火薬庫にトランプはお手上げ

Trump Is Clueless on Iran and North Korea

2020年1月8日(水)16時40分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

包囲事件の引き金は昨年12月29日、米軍がカタイブ・ヒズボラの関連施設5カ所を空爆したことだ。この空爆で少なくとも25人が死亡し、55人以上が負傷した。

米軍の空爆は、同月27日にイラク北部のイラク軍基地にロケット弾が撃ち込まれ、請負業者の米民間人1人が死亡した事件への報復だった(ほかに米兵4人とイラク治安部隊員2人が死亡)。だが、事前にイラク側に意見を求めることはなかったようで、イラク軍司令官は今回の空爆を「裏切り」と非難した。

現実認識を拒むせいで

米大使館包囲事件の3カ月ほど前から、バグダッドやイラク南部では、イランの過剰な影響力などに抗議する大規模な反政府デモが続いていた。だが米軍の空爆で、今度は親イラン派が抗議デモを行う口実を手にし、組織力を見せつけることになった。

イランと北朝鮮に対するトランプの態度は、危機の原因を全く理解していないことを証明している。

2015年に米英仏ロ中独とイランが結んだ核合意からアメリカが離脱せず、対イラン経済制裁を再開せず、イランと取引のある第三国をも対象とする制裁拡大に乗り出していなければ、昨今の一触即発の状態は避けられただろう。

トランプは、主に前任者バラク・オバマの外交的実績を受け入れたくないという理由で、政権高官全員が反対したにもかかわらず離脱を決めた。

それでもしばらくの間、イランはアメリカ以外の5カ国に核合意維持と通商継続を働き掛けていたが、アメリカの制裁はあまりに厳格だった。だからこそ、イランはトランプを交渉のテーブルに引き戻すべく、政治・軍事面で圧力を強化したのだ。

東アジアでの危機が悪化しているのも、トランプが現実を認識しようとしないせいだ。

現実には北朝鮮は核兵器保有国であり、その現実を変える気など金にはない。シンガポールでの首脳会談で、金は北朝鮮を「非核化」する「契約」に署名したとトランプは考えているらしいが、共同声明には北朝鮮が「朝鮮半島」の非核化に向けて「努力する」とあるだけだ。

北朝鮮とイランはどちらも極めて扱いにくい国だが、外交を行う方法は存在する。ビル・クリントン元米大統領は1994年、米朝枠組み合意にこぎ着け、北朝鮮の核開発プログラムを2003年まで凍結させた。オバマはほかの5カ国の指導者と共に、さらに実現が困難に思えたイランとの核合意を交渉によって達成した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

モルガンS、 ビットコインとソラナのETF申請 米

ビジネス

米データセンター冷却関連銘柄が下落、エヌビディアC

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、利益確定売り先行 米ハイ

ワールド

カトリック教会の聖年閉幕、ローマ教皇が隣人への助け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 7
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 8
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 9
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中