最新記事

LGBT

「LGBTを摘発せよ!」 英国で男性約200人レイプした男のいたインドネシア・デポック市長、当局に指示

2020年1月20日(月)12時19分
大塚智彦(PanAsiaNews)

レインハード・シナガは、この甘いマスクで200人の男性をレイプした KOMPASTV / YouTube

<酒場で知り合った男たちを自分の部屋に誘い込み実に190人以上をレイプをしていたインドネシア人が終身刑に。衝撃的なニュースを受けて、犯人が学生時代を過ごした街の市長がとった行動は──>

インドネシアの首都ジャカルタ郊外に位置する西ジャワ州デポック市は首都圏のベッドタウンとして、また最高学府でもあるインドネシア大学の広大なキャンパスを抱える文教地区でもある。

そのデポック市の市長が市内に在住する性的少数者である「LGBT」の人びとやLGBTを支援する活動をしている団体などを厳しく取り締まり摘発する方針を明らかにし、早速国家人権委員会「コムナスハム」から方針の撤回を求められているほか、国際的人権団体などからも批判を浴びるなど物議を醸している。今回の動きには英国でのインドネシア人男性留学生による同性強姦事件も影響しているという。

同市長が示したLGBTの人びとへの厳しい方針は以前からあった。デポック市は2012年に市条例として「公共の場での不道徳な行為の禁止」を決めた。これは公の場で同性同士がキスしたり抱擁したりすることを「市民がそういう情景をみることを望んでいない」として禁じたもので、明文化してはないもののLGBTの人びとを対象としたものであるのは明らかだった。

さらに2019年7月にはLGBTの人びとの権利を制限する条例案が一部野党から議会に提出される動きも明らかになった。その際の野党の言い分は「デポック市でHIV感染者が急増しており、関心がある市民からLGBTの人びとの行動に疑問や不安が出ている」というものだった。

いずれも市民の不安や懸念という「公の関心」を前面に出して、少数派LGBTの行動や権利を制限しようとするもので批判も大きかった。

野党が主張したデポック市でのHIV感染者は同市保健局による2014年に49人だったのが2015年に146人、2016年に278人、2017年に372人と急増しているという統計だった。

しかしこうした野党の主張には当時の政府も「HIV感染者とLGBTの人びとを直接結びつける証拠はない。こうした指摘は人権侵害である」との立場を示し、デポック市の動きを牽制した経緯がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 8
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中