『セサミストリート』50周年、人種問題を超えたマペットたちは子供番組の革命児だった
After Sesame Street: What’s Next for Children’s TV?
番組を観た子供たちの学習効果がアップ
大学院で発達心理学を専攻した私は子供が絵本や映像にアクティブに反応するのを知っていた。テレビは視聴者を受け身にする媒体だ。
子供がキャラクターに語り掛け、学び、一緒に遊べる番組、子供の思いを受け止め、子供の自信を育てる番組を作ることは可能だろうか。答えはイエス。
媒体が何であれ、考える時間と場を与えれば、子供たちはそこに登場するキャラクターと双方向の関わりを持つ。そんな信念が『ブルーズ・クルーズ』の制作を支えた。
シリーズが放映された10年間に何百万人もの子供たちがホストのスティーブに語り掛け、犬のブルーと一緒に知育ゲームに挑戦した。その後の調査でこの番組を見ていた子供たちは標準テストでより良い成績を上げることが分かった。
効果的だったのは、クイズの答えを出す前に4拍ほど間を置いたこと。その間に子供は与えられた情報を基に自分で答えを考える。教育的な要素に双方向性を持たせ、反復を増やし、語り掛けを長くする。
こうした工夫により、新たなスキルをしっかりと定着させ、学習効果を上げることができた。当時と比べ、今は制作側の技術的な選択肢が増え、膨大な研究調査や番組制作の経験を基に良質の番組を作れる環境が整っている。子供向けのコンテンツは豊富にあり、テレビに限らずモバイル機器でも視聴できる。
一方でアメリカでは人種・民族別の人口構成が変わりつつあり、『セサミストリート』がいち早く取り組み、今も続けている試み、つまり多様性を尊重する番組作りが一層重要になっている。では、今後はどんな子供番組が生まれるだろう。大いに楽しみでもあるが、作り手は気を引き締める必要がある。