『セサミストリート』50周年、人種問題を超えたマペットたちは子供番組の革命児だった
After Sesame Street: What’s Next for Children’s TV?
VRなどの技術をどう生かすか
各種アプリの登場で子供の遊び方は変わった。幼児でもタッチスクリーンに触れて直感的に機器を操作するようになった。物語をベースにしたコンテンツでは、今後ますます子供たちが自分で操作できる範囲が広がり、ストーリー展開を自分で選んだり、バーチャル・リアリティー(VR=仮想現実)ゴーグルを装着して物語の世界に入り込んだりできるようになるだろう。
制作側が問うべきは、こうした技術をどう生かすかだ。物語に新たな層を重ね、個々の子供のレベルに合わせて遊び、学べるようにできるだろうか。子供がほかの人の立場に身を置いて共感できるよう、VRを活用することは可能か。
媒体の役割は娯楽の提供だけではない。子供たちが勇気づけられ、外に出て変化を生み出すようなコンテンツが求められる。作り手はただ技術に頼るのではなく、この番組が目指すものは何か、何のためにこの技術を使うのか、絶えず問い続ける必要がある。
どんなに技術が進歩しても、子供は子供だ。感情面では子供たちは過去50年変わっていないし、今後も変わらないだろう。子供たちは大好きなキャラクターに友達のように語り掛ける。困っている人がいたら助けようとするし、新しい課題に挑戦してスキルを習得する意欲も旺盛で、そして何より笑うのが大好きだ。
将来は今とはまた違った技術的なツールが手に入るかもしれない。だが一番大事なことは、クーニーが50年前に企画に着手したときと変わらない。1つの構想、1つの創造的アイデア、1つの問いが子供たちの生活をより良い方向に変える力になるのだ。
子供たちのことをよく知っていて、理想に燃えている人、実験的な試みに果敢に挑んでより良い番組を作ろうとする人。そんなクリエーターたちが子供番組の新たな時代を切り開くに違いない。
<2019年12月10日号掲載>

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