最新記事

中国経済

中国経済の強みと弱み──SWOT分析と今後の展開

2019年12月5日(木)11時00分
三尾 幸吉郎(ニッセイ基礎研究所)

生産人口減少に備え、「イノベーション重視」へ舵を切るなど構造改革が進む中国(写真は深圳の商業地区) Athit Perawongmetha-REUTERS

<破竹の勢いで世界第2位の経済大国に上り詰めた中国だが、習体制下で成長率は鈍化傾向にある。生産人口の減少、過剰設備・債務問題、米中対立......転換期に求められる構造改革とその進捗は>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2019年10月31日付)からの転載です。

経済成長の勢いが鈍る中国経済

2018年12月、中国では改革開放から40周年を迎えて記念式典が開催された。国内総生産(GDP)はその間に245倍に増え世界第2位の経済大国となった。経済的豊かさを示す一人当たりGDPを見ても、1978年には世界137ヵ国・地域の中で下から4番目の貧しさだったが、2018年にはほぼ中央値まで上昇してきた。但し、その間の道のりは必ずしも平坦ではなかった。1989年6月4日には天安門事件(六四)が発生し、経済成長率は1989年が4.2%、1990年が3.9%と落ち込んだ。また、1998年には不良債権問題が表面化し、経済成長率は1998年が7.8%、1999年が7.7%と落ち込むこととなった。しかし、中国経済はその都度困難を克服し、改革開放から40年間の経済成長率は年平均9.5%と10%近い高成長を実現することとなった1。2008年の世界金融危機に際しても、超大型の景気対策を打ち出して10%前後の経済成長率を維持し、百年に1度とまで言われた世界経済の危機を救うこととなった。ところが、習近平氏が中国共産党トップに就任した2012年以降、経済成長率は緩やかに低下してきている。

Nissei191203_1.jpg

需要別の寄与率を見ると、世界金融危機までプラス寄与だった純輸出はマイナス寄与になることが多くなり、総資本形成(投資)の寄与率は趨勢的に低下する一方、最終消費の寄与率が趨勢的に上昇している(図表-1)。そして、こうした変化の背景には中国経済が抱える構造問題がある。

中国経済が抱える構造問題

1|少子高齢化と人口オーナスの問題

中国の人口は約14億人となった。中華人民共和国が建国された1949年には約5.42億人だったので約2.5倍に増えたことになる。中国の人口は、1960~61年には大躍進政策の失敗やその後の飢饉により2年連続で減少するという危機を経験したが、それを除けば右肩上がりで増加してきた。しかし、増加率の推移を見ると、建国から改革開放までは年率2%で増加していたが、1979年に将来の食糧難に備えるために導入された「一人っ子政策」の影響で、1980年代は年率1.5%、1990年代は同1.0%、2000年代は同0.6%、そして2011年以降は同0.5%と徐々に伸びが鈍化してきた。そして中国は、2013年に開催された中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(第18期3中全会)で、「一人っ子政策」の軌道修正を決定、2016年には「二人っ子政策」に移行した。これを受けて2016年の出生率は1.295%と前年(1.207%)より小幅に上昇したものの2017年には再び低下、2018年には1.094%と建国以来の最低を更新した。その背景には教育費が高いことなどから二人目の子供の誕生を望まない家庭が多いことがあるため、今後も出生率の上昇は期待できそうになく、経済成長の足かせとなりそうだ。

―――――――――――
1 経済発展の歴史に関する詳細は『3つの切り口からつかむ図表中国経済』(白桃書房、2019年)の8~22ぺージをご参照ください

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-TOPIX採用企業は今期6.6%減益予想、先

ワールド

焦点:シリア暫定大統領、反体制派から文民政府への脱

ワールド

台湾輸出、10月はAI好調で約16年ぶり大幅増 対

ワールド

韓国当局者、原潜は国内で建造 燃料を米国から調達の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中