最新記事

ヨーロッパ経済

ECB金利据え置き、新総裁ラガルドは独自スタイル強調

2019年12月13日(金)10時30分

欧州中央銀行(ECB)は12日の定例理事会で政策金利を予想通り据え置くとともに、引き続き追加利下げの可能性に含みを残した。また長期にわたり低金利を維持し、月額200億ユーロのペースで安定的に資産買い入れを継続する方針を示した。記者会見に臨むラガルド総裁(2019年 ロイター/Ralph Orlowski)

欧州中央銀行(ECB)は12日の定例理事会で政策金利を予想通り据え置くとともに、引き続き追加利下げの可能性に含みを残した。また長期にわたり低金利を維持し、月額200億ユーロのペースで安定的に資産買い入れを継続する方針を示した。

ラガルド新総裁は就任後初の記者会見の冒頭で、「私には独自のスタイルがある。拡大解釈や勘ぐり、相互参照はしない。ありのままの自分でいるつもりだ」と指摘。報道陣だけが「聴衆」ではないとし、ECBのメッセージを広範に届けるために専門用語ではない様々な用語を用いると述べた。

またドラギ前総裁が9月に発表した景気刺激策に不快感を示した複数のECB理事会メンバーとともにコンセンサスを模索することが目標であると強調。「はっきり申し上げておきたいが、私はハトでもタカでもない。私の夢は知恵の象徴であるフクロウになることだ」とした。

DNBのエコノミスト、シェルスティ・ハウグランド氏は「ラガルド氏が総意を目指す姿勢を明確に打ち出したことで、今後タカ派の影響力が強まることも予想される」と指摘した。

来年のユーロ圏の経済成長率見通しに関しては従来の1.2%から1.1%に引き下げたほか、来年のインフレ率は1.1%と目標の2%近傍を依然大きく下回る水準に設定した。

初めて公表した2022年の経済成長率見通しは1.4%、インフレ率見通しは1.6%に設定。22年第4・四半期に限ってはインフレ率は1.7%と見込んだ。ラガルド氏は「方向性としてはもちろん良いが、これが追求すべき目標かと問われれば、その答えはノーだ」と語った。

戦略見直しに関しては来年1月から開始し、年末までの完了を見込む。ラガルド総裁は見直しについて「あらかじめ決められた着地点はない」 とし「実際にはやや期限切れで、遅れていると考えている」と述べた。

また見直しは「包括的でなければならず、あらゆる問題を検討する必要がある。時間はかかるが、かかり過ぎるということはない」と指摘。「従来の専門家にとどまらず、欧州議会の議員や学術関係者、市民社会の代表などからも意見を聴取する予定で、われわれは単に政策を発信するだけではなく、聞く耳を持っていることも示したい」とし、気候変動や不平等に起因する「巨大な課題」にも取り組むと語った。

[フランクフルト ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191217issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月17日号(12月10日発売)は「進撃のYahoo!」特集。ニュース産業の破壊者か救世主か――。メディアから記事を集めて配信し、無料のニュース帝国をつくり上げた「巨人」Yahoo!の功罪を問う。[PLUS]米メディア業界で今起きていること。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米9月雇用11.9万人増で底堅さ示唆、失業率4年ぶ

ビジネス

12月FOMCで利下げ見送りとの観測高まる、9月雇

ビジネス

米国株式市場・序盤=ダウ600ドル高・ナスダック2

ビジネス

さらなる利下げは金融安定リスクを招く=米クリーブラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中