ニュース速報
ワールド

アングル:高市氏、米ベネズエラ攻撃の評価保留 政府内に支持求める声も

2026年01月05日(月)18時20分

写真は高市首相。2025年12月、都内で代表撮影。REUTERS

Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto Kentaro Sugiyama

[東京 5日 ロイ‍ター] - 米国のベネズエラ攻撃が正当なものだったか‌議論を呼ぶ中、中国を念頭に「力による現状変更」に反対してきた日本は難しいかじ取りを迫られている。高市早苗首相が5日の年頭会見で語った内容は外務省主導でまとめた「答弁案」に沿‌ったもので、同盟国・米国の軍事行​動が国際法違反か否かの評価には踏み込まなかった。一方、政府内には攻撃に対して賛否両面の声があり、専門家は日本外交の長期指針を問い直すべきだと指摘している。

<外務省案がほぼそのまま>

「邦人保護には万全を期すとともに、ベネズエラにおける民主主義の回復及び情勢の安定化に向けた外交努力を進めていく」。高市氏‌は5日、訪問先の三重県伊勢市での年頭記者会見でこう述べた。経済政策に多くの時間を割いたが、報道陣からは米のベネズエラ攻撃に対する政府の見解を問う質問が出た。

高市氏の発言は、前日にソーシャルメディアのXに投稿した内容を踏襲したものだ。ベネズエラ攻撃後、政府は高市氏による対外発信の内容を関係者間で協議した。複数の政府関係者によると、外務省は①民間人の被害状況など米の攻撃が国際法違反か否かを判断するには材料が不足している、②トランプ米大統領の判断には触れず民主主義や法の支配に反してきたマドゥロ政権が転機を迎えた点に着目する、③日本人保護の姿勢を強調する、との要素を重視して答弁案を練った。​関係者の1人は「高市氏側から特段の注文はなく、外務省の提案がほぼそのまま⁠通った」と述べた。

ロシアによる2022年2月のウクライナ侵攻に対し、日本は主要7カ国(G7)とともに「力による現状変更」‍に反対を唱え、「法の支配」の重要性を訴えてきた。念頭にあったのは海洋進出を強める中国で、当時の岸田文雄首相は「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」と発信した。

しかし、今回は攻撃した側が米国だった。中国と対峙するには唯一の同盟国との関係強化が欠かせない。高市氏は会見で「我が国は従来から自由、民主主義、法の支配といった基本的価‍値や原則を尊重してきた。こうした一貫した立場に基づき、G7や地域諸国を含む関係国と緊密に‍連携」し‌ていくと強調したが、米国の軍事行動を支持するかどうかは明言しなかった。

政‍府内には「トランプ氏の行動は、ベネズエラの友好国である中国へのけん制でもある」と分析し、「日本は今回の攻撃を支持するべきだ」と話す関係者もいる。一方、高市首相が2日のトランプ氏との電話協議で今春の訪米に向けた調整を進めることで合意したことを念頭に、「米国を批判して日米関係が悪化すれば、政権運営そのものが批判されかねない。バランスを取った答⁠弁になるのは仕方がない」と話す関係者もいる。

<政府と与党で「あうんの呼吸」>

政府の見解が定まらない中、自民党の安全保障調査会長を務める小野寺五典元防衛相は4日、「ベネズエラ⁠侵攻は『力による現状変更』そのもので、中露を非難‍する論拠に矛盾する」とXに投稿した。

法政大学法学部の河野有理教授(政治史)は、「政府と与党であうんの呼吸がある」とみる。与党の重鎮が政府の見解を代弁しているとの見立てだ。河野氏は、今回の攻撃によって「リベラルな外​交秩序を守っているのは日本とEU(欧州連合)だけになってしまった」と指摘。「力による世界分割の発想を前にして、日本外交の長期的な指針が問われる」と話す。「一足飛びには難しいかもしれないが、国際的な安全保障環境を踏まえた防衛力の強化は考えざるを得ないだろう」

(鬼原民幸、竹本能文、杉山健太郎 編集:久保信博)

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRBミラン理事、今年の大幅利下げ改めて主張 「1

ワールド

ベネズエラ、外部干渉受けず自らの運命決定を ロシア

ワールド

米ベネズエラ介入で「世界の安全毀損」、国連人権事務

ビジネス

インタビュー:第4世代電池を26年度上期に投入へ、
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 3
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視した母親が目にした「衝撃の光景」にSNS爆笑
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 7
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 8
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 9
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中