最新記事

人権問題

日本人青年と留学生、ハンセン病患者をサポート 世界で3番目に患者抱えるインドネシアで

2019年12月6日(金)18時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

ハンセン病患者への差別ストップを訴える「ハンセン病ケアコミュニティー(LCC)」のメンバー。左から嶋川さん、ナディラさん、高島氏、伊藤さん、風間さん、井出さん(筆者撮影)

<医療が進化し治療法が確立しても、人びとの固定観念を変えるのは容易ではない>

インドネシアで働く若者と大学に留学している日本人が手を携え、「ハンセン病患者との交流を通じた理解と支援」を呼びかけるワークショップが12月4日から6日までジャカルタ郊外の国立インドネシア大学公衆衛生学部の一角で開催された。

インドネシアは患者数でインド、ブラジルに次ぐ世界第3位のハンセン病大国。しかし、ハンセン病に対する医療対策、国民の認知度、知識も不十分で、2018年に報告されたハンセン病新規患者は約1万7000人とこの20年間ほぼ横ばいの状態が続いている。これは感染を自覚しても社会的に差別されることを危惧して病院を訪れないことも一因とされている。

「完治する病気であること」「接触感染する可能性がないこと」など病気に対する社会の理解と国民の知識不足からハンセン病患者は完治後も一般社会に受け入れられることは困難で、「リポソス(回復村)」と呼ばれる隔離された地区での生活を余儀なくされているのが現実だ。

そうしたインドネシアのハンセン病患者の実状を知ったジャカルタ・デポック在住の会社員、高島雄太(30)は、仕事の合間をぬってインドネシア人の仲間や日本人留学生とともにリポソスに滞在しながら患者らとの交流や村のインフラ整備を進める「ワークキャンプ」を計画、実行している。

インドネシア全土には約50か所のリポソスがあるといわれ、ハンセン病の患者、完治者が家族などと生活している。

高島らの活動で2019年にはジャワ島のジュパラ、ドノロジョ、モジョケルト、トゥンバンなどのリポソスに滞在しながら実績を残してきた。そうした地道な活動は日本人の留学生、インドネシア人の大学生を中心に輪を広げ、「ハンセン病ケアコミュニティー(LCC)」という組織としてワークキャンプや各地の大学での展示会、ワークショップの開催と、さまざまな形で実を結びだしている。

インドネシア大学公衆衛生学部の修士課程で学ぶナディア・ベラディナ(23)もそうした高島の活動に共感した一人で、ワークキャンプ参加や高校での啓もう活動に携わり近くインドネシア人の社会人ら6人で財団を立ち上げる準備を進めている。

「社会に出る前の学生時代にこうした活動に関わることができてとても役に立った」と話す。高島も「学生時代に活動しても卒業して就職すると同時に活動家ら離れてしまうことが多く、より多くの若いインドネシア人が継続して活動できる場を作りたい」と財団創設への期待を表明する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中