最新記事

人権問題

日本人青年と留学生、ハンセン病患者をサポート 世界で3番目に患者抱えるインドネシアで

2019年12月6日(金)18時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

otsuka_20191206_184408.jpg

インドネシア大学キャンパスに展示されたワークショップの活動写真

「家族のように迎えてくれて感動」

高島は大阪大学インドネシア語学科に在学中に1年間休学してインドネシアを訪問。中国にある同様の回復村での経験を生かしてジャカルタ近郊タンゲランのリポソスを訪れたのがインドネシアと長く関わるきっかけになったという。

国立インドネシア大学でのワークショップには名古屋・南山大学外国語学科からの留学生、伊藤妃渚(ひな)(21)も駆けつけて高島と一緒にインドネシア人学生への展示パネルの説明などを行っていた。

2017年8月に東ジャワ州ナンガット村の「リポソス」に初めて入った時、「自分は嫌われると思ったが最初の訪問にもかかわらず家族のように歓迎してもらい、ハンセン病の方の生の姿に接することができて感動した」と話す伊藤。大学卒業のため日本に戻ることになるが「またインドネシアに戻ってきて活動を続けたい」と将来への思いを話す。

ワークショップ初日の4日には会場に彼女のほかに3人の日本人留学生も駆けつけた。立命館大学経営学部の嶋川寿美玲(21)、金沢大人文学部の風間万理(22)、山梨県立大国際政策学部の井出麻乃(19)は、高島の活動に影響を受け、リポソスを訪問するなどしてインドネシアが直面するハンセン病問題の課題と直面してきたという。

ワークショップを訪れたインドネシア人学生のアンケート結果によると、インドネシア語で「Kusta(クスタ)」というハンセン病に関しては大半の回答者が「知っている」と回答するものの、具体的な知識になると「不治の病」「感染の危険がある」など不正確なケースが多く「まだまだ啓もう活動の必要性がある」(高島)との思いを新たにしたという。

「ハンセン病が完治して一般の村で生活している人も、病気などで近くの病院を訪れても、見た目で判断されて治療を拒否されることが今でもある。そういう人は結局リポソス近くのハンセン病患者がよく訪れる病院までわざわざ行かなければ治療を受けられないのが現実だ」と話す高島、インドネシアでの「ハンセン病患者、元患者と共生できる社会の実現」を目指す活動はまだまだこれからだ。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中