最新記事

メンタルヘルス

ストレス耐性は就学前に決まる? 産業医が見た「ストレスに強い人」が共有する経験

2019年11月6日(水)16時10分
武神 健之(医師、医学博士、日本医師会認定産業医、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事) ※東洋経済オンラインより転載

では、どのようにすれば、この非認知能力を持つような大人になる子育てができるのでしょうか。

ストレスに強い人を育てるために、欠かせないこと

2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンは、幼児教育の経済学の中で、非認知能力が高い人は学歴、職業、所得、生活保護、犯罪などにおいて、低い人よりも恵まれた人生を送ったと述べています。そして、非認知能力を身に付けるのは、就学後よりも未就学児が効果的であること、成功や失敗などの体験から得られることが多いと述べています。

具体的には、未就学児であれば、好きなだけ好きな遊びに集中して取り組ませてあげること、親(大人)と一緒に絵本の読み聞かせや料理・掃除・お片付けなどのお手伝いをすること、たくさん褒められること、また、うまくできることだけはでなく、許容範囲内でうまくいかないことも経験することなどで、非認知能力は育まれると言われています。

就学後の非認知能力は、コミュニケーションを中心とした、さまざまな体験活動を継続できると育まれます。ただし、子どもの生活圏は成長とともに家庭よりも学校や友人関係に広がっていきますので、就学前のように"家などで親(大人)と"という活動よりも、学校や地域における好きなクラブ活動などで、仲間たちとともに、挑戦・成功・失敗などの体験を継続することが重要になります。

例えば、学生時代にインターハイ出場経験のある人、元プロのスポーツ選手などが、非認知能力が高いことは想像しやすいかもしれません。e-sports(いわゆるテレビゲーム系)の世界チャンピオンや、芸術系での長年の経験を持った人などにも、ストレスに強い大人をたくさん見てきました。

大切なことは、子ども(学生)時代に、何か好きなことを仲間たちとともに継続的に没頭してきたという経験です。

産業医として過去1万人以上の人と接するなかで、このような経験のある人たちには共通して、①物事に対し純粋に気持ちいい、またはうれしいと感じる気持ちがあること、②達成感や悔しさなど挑戦や試行錯誤の後に得られるものがあるということを体験していること、③1人ではできなくても仲間との協力や思いやりなどで乗り越えられる、という3つの感情があることがわかりました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、零細事業者への関税適用免除を否定 大

ビジネス

加藤財務相、為替はベセント米財務長官との間で協議 

ワールド

トランプ米大統領、2日に26年度予算公表=ホワイト

ビジネス

米シティ、ライトハイザー元通商代表をシニアアドバイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中