最新記事

香港デモ

香港デモ隊と警察がもう暴力を止められない理由

Hong Kong’s Violence Will Get Worse

2019年11月12日(火)18時25分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌シニアエディター)

バリケードを築くためトラフィックコーンを手に出動するデモ隊(11月11日、銅鑼湾) Thomas Peter-REUTERS

<腹を撃たれて倒れたデモ参加者、親中派の男性に火を付けたデモ参加者──世界の香港に対するイメージは一日にして暴力的なものに変わった。これからどうなるのか>

香港で6月から続いている反政府デモで、初めての死者が出たのは11月8日。死亡したのは、警察のデモ隊の強制排除の最中に建物から転落し、入院治療していた学生だ。事態はそこから一気にエスカレートした。11日には警察官が丸腰のデモ参加者に至近距離から発砲し、2人が撃たれ、一人が重体となっている。黒い服を着た男が親中派の男性に火をつける事件もあった。男性は重体だ。

これまでデモはほとんど週末限定で行われてきたが、転落した学生が死亡したことに抗議して月曜のゼネストが呼びかけられた。11日朝、デモ隊の一部が通勤妨害を行うと、市内各地で警察とデモ隊が衝突。ビジネス街の中環(セントラル)では警察がデモ隊に向けて催涙ガスを使用し、巻き添えも出す事態になった。暴力の連鎖はどこまで続くのか。Q&A方式でまとめた。

──警察とデモ隊の両方が暴力に訴えるようになっているようだ

確かにそうだが、両者を同列に扱うのはよくない。デモは分散型で、デモを主催する団体のリーダーは繰り返し「暴力を使うな」と呼びかけているが、彼らに過激なデモ参加者をコントロールする力はない。だが警察の対応は組織的。デモ隊が掲げる要求の中にはそもそも「警察による暴力の責任追及」も含まれている。ところが警察はデモ参加者を撃っただけでなく、それを正当化して見せた。

複数の世論調査の結果を見ても、香港市民は一連の暴力について、デモ隊よりも警察に責任があると考えているようだ。10月の調査では、警察による暴力についての独立調査を支持する人は88%にのぼった。政府全体の評価と同じく、警察への評価もこれまでにない低水準だ。

──デモ隊はなぜ暴徒化しているのか

警察による暴力行為が彼らを暴徒化させている。とりわけ若い香港市民は警察を「敵」と見なしており、警察がデモ隊の強制排除を行った後に、デモ隊に不意を突かれて襲われる事態も頻発している。また中国系マフィア「三合会」のメンバーたちも、おそらく中国当局にけしかけられて、デモ隊や民主派の政治家に攻撃を仕掛けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に

ビジネス

トランプ氏、8月下旬から少なくとも8200万ドルの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中