最新記事

香港デモ

香港デモ隊と警察がもう暴力を止められない理由

Hong Kong’s Violence Will Get Worse

2019年11月12日(火)18時25分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌シニアエディター)

平和的なデモが難しくなっている事情もある。地下鉄を運営しているMTR(香港鉄路)は、デモの発生に備えて周囲の駅を閉鎖するようになり、MTRが「デモを制御するための道具と化している」と、デモ隊の間に不満が募っている。当局がデモの申請を却下するケースも増えており、多くの市民が無許可で街頭に繰り出す結果になっている。中国支持派とみられる店舗への攻撃や、MTRなどのインフラに対する破壊行為も抵抗手段として定着してきた。

香港には自由貿易のハブというイメージがあるが、実際には、その経済のほとんどは十指に満たない富豪一族が牛耳っている。そして彼らは熱烈な北京支持者だ。

抗議行動を激化させる要素は他にもある。香港のナショナリズム(独立を目指す思想)が勢いを増している――たとえ実現することがなくても、血が流れる思想だ。香港市民と中国本土の市民は、これまでも互いを蔑視して差別合戦を繰り広げてきた。その対立が今、これまで以上に先鋭化している。

香港の若い世代が、中国本土の若者と同様、日本軍占領下の激しい抵抗の歴史を聞いて育ったことも忘れてはならない。そこではしばしば、敵の内通者に対する憎悪と復讐が強調される。デモ隊の中でも強硬論者たちは「親中」のスタンスを取る者は誰でも「裏切り者」と見なす。中国政府寄りの報道で知られる環球時報や新華社通信の記者がデモ隊から暴行を受けるケースもあった。警察が実際にデモ隊の中にスパイを潜入させた疑いが発覚したことを受けて、強硬派は不信感を募らせている。

──警察の暴力は行き過ぎか

催涙ガスが驚くほど頻繁に使用されている。8日に死亡した学生が建物から転落したのも催涙弾を避けようとしたからだとも報じられている。またネット上には、子どもや高齢者が催涙ガスの影響に苦しむ様子を撮影した複数の動画が投稿されている。警察がデモ参加者を(既に拘束されたり地面に押し付けられたりしている場合でも)殴るケースも頻発している。11日のデモでは、一人の警察官が白バイでデモ隊に突っ込んだ。女性のデモ参加者が性的な暴力を受けたという報告も多くある。

実弾が使用されるケースも増えている。以前は、警察が使用するのはゴム弾がほとんどだった(それでも重傷者は出ていた)。11日の抗議デモの様子を撮影した別の動画には、警察が教会に押し入って無防備な男性を殴る様子も映っている――キリスト教人口が多い香港において、これはとりわけ挑発的な行動だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税、商品価格押し上げ始める アマゾンCE

ビジネス

ネトフリ第4四半期売上高が予想上回る、ワーナー買収

ビジネス

アングル:国債売りが世界的に拡大、日本の長期金利高

ワールド

ベネズエラ、石油売却で3億ドル取得 米との供給契約
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 4
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生…
  • 5
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    トランプが「NATOのアメリカ離れ」を加速させている…
  • 8
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 9
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 10
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中