最新記事

ビットコイン

半年後の価格は......ビットコインの価格算定モデルが世界で話題に

2019年10月17日(木)18時05分
木村兼作(公認会計士)

ビットコインの適正価格はいくらなのか SlavkoSereda-iStock

<株や事業のように、ビットコインも「適正な価格」を算出することはできるのか。世界的な注目を集めるモデルによれば、来年5月の価格は何と......>

既存のファイナンス・会計の世界では、株や債券といった金融資産、または事業や企業そのものの適正な「価格」を算定するために様々な評価技法やモデルが使われます。例えば事業価値算定や株式価値算定で使われるDCF(Discounted Cash Flow)やCAPM(Capital Asset Pricing Model)などが一例です。

これらのモデルのベースとなる考え方は、将来のキャッシュ・フローを予測し、それを現在価値に割引くというものであり、その前提として"将来のキャッシュ・フロー"の存在があります。しかし、ゴールド、シルバー、そしてビットコインはそれ自体を持っているだけでは、事業があげる利益や金融資産がもたらす利息のようなキャッシュ・フローを生成しません。

将来のキャッシュ・フローの予測ができない以上、ファイナンスで一般的に使われる評価技法やモデルをビットコインの価格算定に使うことはできません。ビットコインの価格を評価する共通のモデルが今まで存在しなかったことも金融機関がそのポートフォリオにビットコインを追加する妨げになっていたと考えられます。

欲しい人が増えたり減ったりという、需要の側面で価格が乱高下している現在のビットコインですが、果たして適正な価格はいくらなのか。それはどんな計算式を使えば導き出せるのか――。

そんな中、記事投稿サイトMediumに寄稿された記事の中で紹介された一つのモデルが世界的に話題になっています。投稿者であるPlanB(本名は非公開)がその記事、"Modeling Bitcoin's Value with Scarcity"("希少性に基づいたビットコイン価値のモデル化")の中で紹介するのがStock-to-Flow (ストック対フローモデル) というモデルです。

希少性の定義とストック対フローとの関係

ストック対フローモデルはまずゴールドやシルバーの希少性に着目します。ここでいう希少性は単に地球上に存在する量を言うのではなく、一年間の新規供給量に対する現在の備蓄量のことを言います。この考え方はSaifedean Ammousの著書『The Bitcoin Standard』でも紹介されており、PlanB自身、この本にヒントを得たと話しています。

さて、以上の前提にたつと、希少性はストック対フロー(SF)、つまり次の式で表すことができます。
SF = stock / flow

ストックが現在の備蓄量を表し、フローが年間の新規供給量を表します。これをいくつかの資産に当てはめてみます。

191015kike1.png

Source:"Modeling Bitcoin's Value with Scarcity"


そうすると、ゴールドのSFが一番高いことがわかります。

SFが62ということは現在の金の備蓄量と同じ量を生成するのに62年かかることを意味します。次に希少性が高いのはシルバーでSFは22です。ゴールドやシルバーがコモディティとしての価値だけでなく、貨幣としての機能を持つのはその高いSFに理由があると考えられます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ビジネス

ブラックストーンとTPG、診断機器ホロジック買収に

ビジネス

パナソニック、アノードフリー技術で高容量EV電池の

ワールド

タイ、通貨バーツ高で輸出・観光に逆風の恐れ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中