最新記事

健康

比ドゥテルテ、難病告白 不安抱く国民に「年相応の病気持ち」と発表し火に油

2019年10月10日(木)19時22分
大塚智彦(PanAsiaNews)

確かにドゥテルテの片目はまぶたが下がって、心ここにあらずといった様子に見える REUTERS

<政治家にとって健康問題は命取り。難病の大統領は過密スケジュールに「俺を殺す気か」と漏らしたという>

フィリピンのドゥテルテ大統領が難病である「重症筋無力症」を患っていることを自ら告白して話題となっている。74歳になるドゥテルテ大統領はこれまでにも数々の健康不安説が流れ、自身も背中の痛みや内臓の不調、睡眠薬服用などの病気を明らかにするなど満身創痍の状態とされている。

大統領の任期は2022年まで残っていることから「任期途中の辞任」のうわさも出ているが「大統領の職務遂行には支障も心配もない」(大統領府)として国民の不安払しょくに懸命となっている。

ロシアを訪問中だったドゥテルテ大統領は10月5日、モスクワで行われたフィリピン人コミュニティーとの会合の席で自ら「筋力が弱くなって片方の目のまぶたがさがる症状が出ている。このため片方の目は一方より小さくて勝手に動く」と目の調子に関して話しはじめた。

そして大統領府が6日に発表したドゥテルテ大統領の発言記録などによると「これは神経の機能不全で重症筋無力症であり、祖父からの遺伝だ」と病名についても明らかにしたのだった。

フィリピンのマスコミは一斉にこの発言を伝え、「確かに片方の目のまぶたが重たそうに見える写真がある」などと伝えるとともに大統領の過去の健康上の問題や病気にまで言及した。

ABSCBNニュースはさらに「74歳という年齢を考えれば、大統領は年齢相応の病気を持っており、特段心配することではない」とするサルバドール・パネロ大統領府報道官のコメントを伝え、国民の間に健康不安説が広がることへの懸念を示した。

睡眠障害に食道逆流症など満身創痍

2016年の大統領就任以来、ドゥテルテ大統領には健康問題が実は常に付きまとっていた。
2017年には睡眠時に酸素供給装置を使用していることを明らかにし、さらに脊髄損傷の痛みを和らげる鎮痛剤の処方も明らかにした。

2018年には胃と腸の内視鏡検査の結果、胃食道逆流症と医師団から診断されたこともある。2019年には睡眠薬の常用的服用を告白したほか、目が見えなくなっていると報道されたこともある。

こうした報道などで「いつも眠たそうにしている」「目を閉じているようだ」などという指摘は大統領自身が今回自ら告白した「重症筋無力症」と関係した症状だったのではないかとみられている。

フィリピンのマスコミ報道などがフィリピン医師会の見解などとして伝えたところによると、「重症筋無力症」は「目や口、顔、手足の筋肉が正常に動かなくなる神経系の病気で話しにくくなったり、まぶたが重くなったりというような症状が出るが治療法は確立していない」という。

ちなみに日本の厚生労働省では「重症筋無力症」は「特定疾患に指定された神経筋系の難病」とされているという。


20191015issue_cover200.jpg ※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=続伸、S&Pが終値で最高値 グロース

ビジネス

再送-11月の米製造業生産は横ばい、自動車関連は減

ワールド

米最高裁、シカゴへの州兵派遣差し止め維持 政権の申

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、GDP好調でもFRB利下げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中