最新記事

少数民族弾圧

ウイグル民族の文化が地上から消される

Cultural Genocide in Xinjiang

2019年10月1日(火)18時20分
水谷尚子(明治大学准教授、中国現代史研究者)

共産党はウイグル文化を根絶やしにしようとしている(政府の許可で撮影されたウルムチの再教育施設) BEN BLANCHARD-REUTERS

<元大学学長らに近づく死刑執行――出版・報道・学術界壊滅で中国共産党は何をもくろむ?>

新疆大学の学長だったタシポラット・ティップが中国・北京の空港で拘束されたのは2017年3月のこと。その後、「党に忠誠を尽くすよう見せ掛けて、実は民族主義者であるという『両面人(二面性を持つ者)』」などのレッテルを貼られ、「国家分裂主義者」として中国共産党から執行猶予2年付きの死刑判決を受けた。

ティップは日本の東京理科大学に留学し、博士号を取得した地理学と地質学の専門家だ。拘束から2年以上が経過した9月中旬、国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは家族や複数の情報源の調査の結果、ティップの死刑が近く執行される恐れがあると判断。即時の無条件釈放を呼び掛ける声明を公表した。

死刑執行が懸念されているのはティップだけではない。ロシアに留学し、ウイグル伝統医学の大家であった新疆医科大学のハリムラット・グプル元学長、新疆ウイグル自治区教育庁のサッタル・ダウット元庁長らも拘束後の消息がなく、安否が懸念されている。

新疆ウイグル自治区では、2017年から大々的に行われるようになった強制収容施設での不当な拘束が今も続いている。多数派民族である漢人以外の人々が収監されているが、その大部分はウイグル人だ。収監者数は100万人を超すともいわれる。

このところ中国共産党は、ウイグル人社会を担ってきた知識人を、文系理系を問わず強制収容所に送っている。ウイグル語やウイグル文化の消滅を目的としているとしか思えないほどの弾圧だ。中国におけるウイグル語の言論空間はこの2年で消滅した。表現の場にいたウイグル知識人が強制収容で社会から「消失」したからだ。

ウイグル書店が続々閉鎖

米ペンシルベニア大学東アジア研究センターのデービッド・デットマン副所長は今年春、「2018年春以降、(西部の)カシュガルやホータンでウイグル語専門書店が相次いで閉鎖されている」と、現地で撮影した写真入りでツイートした。

カシュガルのジャナン街にあった書店は、当地のウイグル人が最も訪れる書店の1つだった。しかし中国当局により閉鎖され、米短波ラジオ放送「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が取材した地元住民の話では、「店主メメット・エリは強制収容所に送られた」という。

区都ウルムチの新疆大学の真正面にあり、ウイグル人学生のたまり場だった「トグルク書店」も閉鎖となり、経営者であった兄弟は、2017年初めに強制収容所に収監された。弟は懲役10年、兄の処遇は不明だという。

ニュース速報

ワールド

アングル:サンダース氏がネバダで圧勝、民主指名争い

ワールド

サンダース氏がネバダで圧勝、バイデン氏2位 米民主

ワールド

お知らせ-重複記事を削除します

ワールド

ウイルス潜伏、中国で27日間の症例 想定より長い可

MAGAZINE

特集:上級国民論

2020-2・25号(2/18発売)

特権階級が不当に罪を逃れている── 日本を席巻する疑念と怒りの正体

人気ランキング

  • 1

    「部外者」には分かりにくい、日本の見えないマナー違反

  • 2

    クルーズ船対応に見る日本の組織の問題点──権限とスキルの分離が組織を滅ぼす

  • 3

    映画「パラサイト」に隠れている韓国のもう一つの「リアルさ」

  • 4

    韓国にパンブーム到来、ソウルの「日本のパン屋」に…

  • 5

    「マスクは今週1億枚を供給、来月には月産6億枚体制へ…

  • 6

    「ホライモリは悲しんだ」......7年間、同じ場所で動…

  • 7

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 8

    新型コロナウイルス、急拡大の背景に排泄物を介した…

  • 9

    ヒトの老化は、34歳、60歳、78歳で急激に進むことが…

  • 10

    深い眠りによって脳内の老廃物が洗い流されているこ…

  • 1

    夜間に発電できる「反ソーラーパネル」が考案される

  • 2

    文在寅を見限った金正恩......「新型コロナ」でも問答無用

  • 3

    ロイヤルウェディングの招待状がほのめかしていたメーガン妃の離婚歴

  • 4

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 5

    スキー・スノボに行かなくなった(行けなくなった)…

  • 6

    感染者2200万人・死者1万人以上 アメリカ、爆発的「イ…

  • 7

    「部外者」には分かりにくい、日本の見えないマナー…

  • 8

    新型コロナウイルスはコウモリ由来? だとしても、…

  • 9

    新型コロナウイルス、人口2.6億のインドネシアで感染…

  • 10

    韓国、キャッシュレス完了した国が進める「コインレ…

  • 1

    「歯肉から毛が生えた」という女性の症例が世界で初めて報告される

  • 2

    一党支配揺るがすか? 「武漢市長の会見」に中国庶民の怒り沸騰

  • 3

    ヒヒにさらわれ子どもにされた子ライオンの悲劇

  • 4

    マスク姿のアジア人女性がニューヨークで暴行受ける

  • 5

    新型コロナウイルスはコウモリ由来? だとしても、…

  • 6

    夜間に発電できる「反ソーラーパネル」が考案される

  • 7

    韓国で強まる、日本の放射能汚染への懸念

  • 8

    「武漢はこの世の終末」 チャーター機乗れなかった米…

  • 9

    BTSと共演した韓国人気子役がYouTubeで炎上 虐待さ…

  • 10

    「拷問死したアメリカ人学生」がはばむ文在寅の五輪…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月