最新記事

老化

「歩くのが遅いと老化がすすむ」その兆候は40代半ばには現れている:研究結果

2019年10月18日(金)17時45分
松岡由希子

歩行速度の遅い人は、肺や歯、免疫系の老化がすすみがち Charlie Blacker

<米デューク大学の研究チームは、45歳の人を対象に、歩行速度が生物学的老化や認知機能の低下と関連しているのかどうかを調べた......>

70代以上の高年期では、歩行速度が遅い人は速い人よりも余命が短い傾向があるといわれているが、このほど、40代半ばの中年期でも、歩行速度が脳や身体の老化度合いを示すことが明らかとなった。

歩行速度の遅い人は、肺や歯、免疫系の老化がすすみがち

米デューク大学の博士課程に在籍するライン・ラスムッセン氏らの研究チームは、45歳の人を対象に、歩行速度が生物学的老化や認知機能の低下と関連しているのかどうかを調べ、2019年10月11日、その研究成果をオープンアクセスジャーナル「JAMAネットワークオープン」で公開した。

これによると、老化の加速をあらわす19の身体的・生物学的指標と45歳の歩行速度には関連があり、歩行速度の遅い人は、速い人よりも、肺や歯、免疫系の老化がすすみがちであることがわかった。また、幼年期の3歳に受けた神経認知検査において、すでに「将来、歩行速度が遅い人になるかどうか」が予測できることも明らかとなっている。

歩行速度が遅い人は、実年齢より老けてみえた

研究チームは、1972年4月から1973年3月までの間にニュージーランド南島ダニーデンで生まれ、3歳のときに心理検査や知能検査を受けた1037名のうち、45歳時点で生存している904名を対象に、歩行速度を計測するとともに、尿検査、視力検査、聴力検査、神経認知検査、血液検査、骨密度検査、肺機能検査、頭部MRI検査などを実施した。

その結果、歩行速度が遅い人の脳は、より老化がすすんでおり、総脳容積が小さく、平均皮質厚が薄く、脳表面積が小さく、脳小血管病と関連する病変「白質病変」の発生率が高かった。また、8名の審査員に写真から各被験者の顔年齢を評価してもらったところ、歩行速度が遅い人は、実年齢より老けてみえたという。


被験者はいずれも、3歳のときに、知能や受容言語(相手の言葉を理解する力)、運動能力を検査する45分間のテストを行い、感情や行動を適切に制御できるかどうか、専門家による診断を受けている。そこで、これらの幼年期の検査結果と45歳時点の歩行速度について分析したところ、3歳時点で神経認知機能が低かった人は、45歳時点の歩行速度が遅いことがわかった。もちろん、人々の健康度や認知機能はそれぞれのライフスタイルによっても異なるが、この研究結果は、幼年期からすでに歩行速度が遅くなる兆候がみられることを示している。

歩行速度が健康上の問題を表わすサインに

研究論文の責任著者であるデューク大学のテリー・モフィット教授は、一連の研究成果について「歩行速度の遅い高齢者は、同世代で歩行速度の速い人よりも余命が短い傾向があると考えられてきたが、この研究結果は、幼年期から中年期までを網羅し、高年期までの数十年間にわたって、歩行速度が健康上の問題を表わすサインとなっていることを示している」と評価している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米1月CPI、前年比2.4%上昇 伸び鈍化し予想も

ワールド

米・ロ・ウクライナ、17日にスイスで和平協議

ワールド

米中外相、ミュンヘンで会談 トランプ氏の訪中控え

ビジネス

EU貿易黒字が縮小、米関税と中国の攻勢が響く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 6
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 7
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 8
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 9
    やはりトランプ関税で最も打撃を受けるのは米国民と…
  • 10
    着てるのに見えてる...カイリー・ジェンナーの「目の…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中