最新記事

健康

気圧が下がると頭痛を起こす「気象病」 天候変化が体調に影響する理由とは?

2019年10月24日(木)13時35分
今井 明子(気象予報士・サイエンスライター) ※東洋経済オンラインより転載

気象病の患者数は増加傾向にある Milkos-iStock

「今日は頭が痛いと思ったら、やっぱり低気圧が近づいているみたい」など、体調不良で天気をピタリと当ててしまう人は、皆さんの周辺にもいませんか? このような天気によって引き起こされる体調不良は「気象病」と呼ばれ、決して「気のせい」ではありません。なぜ、天気が体調にも影響するのでしょうか。

「雨の日は頭が痛くなる」「台風が近づくとぜんそくの発作が出る」「梅雨時に古傷がしくしく痛む」──。天気が原因で起きる体調不良は、医療現場では昔から「気象病」と呼ばれていました。長年気象病について研究を行い、日本で初めて「天気痛外来」を開設した、愛知医科大学の佐藤純教授は、こうした症状を「天気痛」と呼びます。

気象病として最も多くの人が挙げる症状が頭痛。ほかにも、首の痛み、めまい、耳鳴り、気管支ぜんそく、関節痛、神経痛、古傷の痛み、鬱(うつ)や不安症なども気象病の症状のひとつです。佐藤先生によると現在、気象病で悩む人は日本で約1000万人にも上る推定されています。

気圧変化で自律神経が活性化

昔から、天気と体調には深い関係があることはわかっていました。ただ、現代の生活習慣によって気象病になりやすい体質になったり、局地的大雨(俗にいうゲリラ豪雨)などの極端な気象現象が目立つようになってきたりすることで、年々気象病の患者数は増加傾向にあると思われます。また、気象病についての研究が進んだのは最近のことなので、近年気象病が一般に認知されるにつれて、「今までなんとなく感じていたあの不調は、天気によるものだったのか!」と自分の気象病に気づくことも、患者数が増えている原因のひとつといえます。

気象病の主な原因は、気圧の変化。変化は急なほど症状が強くなります。主に不調を訴えるのは気圧が低下するときですが、なかには気圧が上昇するときに不調を訴える人もいます。

気圧が変化すると、人間の体はストレスを感じるため、それに抵抗しようとして自律神経が活性化されます。自律神経系には、交感神経と副交感神経があり、交感神経は血管を収縮させ、心拍数を上げて体を興奮させる働きがあります。一方、副交感神経は血管を広げて体をリラックスさせる働きがあります。この交感神経と副交感神経の調整がうまくいかないと、さまざまな体調不良の原因となってしまうのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正(17日配信記事)-日本株、なお魅力的な投資対

ワールド

G7外相会議、ウクライナ問題協議へ ボレル氏「EU

ワールド

名門ケネディ家の多数がバイデン氏支持表明へ、無所属

ビジネス

中国人民銀には追加策の余地、弱い信用需要に対処必要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 5

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 6

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 7

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 8

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中