最新記事

災害

ジャングル火災はアマゾン以外でも インドネシア、オランウータンなどに深刻な影響

2019年9月28日(土)16時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

焼け出され呆然としてたたずむオランウータン。火災の煙が立ち込めると空気は煙草50本を一度に吸ったようなひどい状態になるという。Willy Kurniawan - REUTERS

<南米アマゾンの火災は地球温暖化への影響があるとして世界中の注目を集めている。一方、インドネシアのジャングルの火災は、絶滅危惧種などの野生動物が生息地を失い、広範囲で人びとが健康被害を受けている>

インドネシアではスマトラ島、カリマンタン島(マレーシア名ボルネオ島)を中心にした熱帯雨林で火災が続いており、その煙害が隣国のシンガポールやマレーシア、そしてフィリピン上空まで流れ込み、住民の呼吸器系疾患などへの深刻な影響を与えている。

インドネシアの煙害は主に開発業者による「森林焼き払い」やプランテーション業者や農民による伝統的な「焼き畑農業」という人為的な「放火」が要因で、毎年この時期に近隣国から苦情が寄せられるのが「恒例」となっている。

しかし2019年の煙害は近年になく大規模、広範囲で周辺国から厳しい抗議を受け、ジョコ・ウィドド大統領も現地視察や軍・警察の動員などで必死の消火作業を続けている。加えて航空機から化学物資を空中散布しての降雨作戦や民間呪術者などによる「雨乞い」行事も行われるなど必死の対応だが、消化が追いつかない状況が続いている。

そんななか、スマトラ島とカリマンタン島にだけ生息する絶滅危惧種のオランウータンにも煙害の被害が及び始める事態になっている。

脱水症状のオランウータン保護

9月21日、西カリマンタン州北クタパン地区のクアラ・サトンムラ近くで現地の自然保護庁職員が1頭のオランウータンを保護した。

「テンポ」紙によると保護されたオランウータンは7歳のオスで住民がゴムプランテーションに迷い込んでいるところを発見、自然保護庁に連絡。係官らが自然保護活動家やオランウータン研究専門家らと協力して保護したという。

このオランウータンは保護時に使用したロープで右脚を負傷したほか、ひどい脱水症状だったため保護施設で治療した後、安全なジャングルに戻すという。

自然保護庁関係者によると、オランウータンが保護された地区はかつて濃密なジャングルが続いており、多くのオランウータンの生息が確認されていたという。

その後開発が続き、ジャングルが減少したうえにゴムプランテーション周辺は今年の森林火災でジャングルの焼失が続いており、オランウータンの生息域が狭くなりエサが減少した結果、脱水症状になって人の居住地区に近いプランテーションに出てきたものとみている。

20191001issue_cover200.jpg ※10月1日号(9月25日発売)は、「2020 サバイバル日本戦略」特集。トランプ、プーチン、習近平、文在寅、金正恩......。世界は悪意と謀略だらけ。「カモネギ」日本が、仁義なき国際社会を生き抜くために知っておくべき7つのトリセツを提案する国際情勢特集です。河東哲夫(外交アナリスト)、シーラ・スミス(米外交問題評議会・日本研究員)、阿南友亮(東北大学法学研究科教授)、宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)らが寄稿。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アメリカン航空、今年の業績見通しを撤回 関税などで

ビジネス

日産の前期、最大の最終赤字7500億円で無配転落 

ビジネス

FRBの独立性強化に期待=共和党の下院作業部会トッ

ビジネス

現代自、関税対策チーム設置 メキシコ生産の一部を米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「iPhone利用者」の割合が高い国…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中