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東南アジア

インドネシア首都移転を大統領が正式表明 反響が薄い理由とは

2019年8月19日(月)13時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

マレーシア方式かミャンマー方式か

東南アジア諸国連合(ASEAN)ではミャンマーが2006年に首都をヤンゴンからネピドーに移転した例がある。これは国際社会から経済制裁を受けていた当時の軍事政権がアンダマン海の洋上から外国勢力によるミサイル攻撃を受けた場合、ヤンゴンは射程距離に入ることが理由とも、軍人の元首が頼る占い師の「お告げ」が理由とも、国土の東西南北のほぼ中央に位置するためとも言われている。何もなかった軍用地の原野を新たに開発し、建造物を新築してアクセス道路、空港、インフラ全てを新たに設け、政府職員が一斉に移転するという首都機能の丸ごと移転となった。

これに対しマレーシアは1993年から着手して首都クアラルンプールから首相官邸を含む連邦政府の大半の省庁、最高裁判所など首都機能の一部を近隣のプトラジャヤに移転させた。

経済機能の中核や議会は依然としてクアラルンプールに残っており、首都機能集中の分離化で効率を図るとともに渋滞解消を狙った当時のマハティール首相による英断だった。

インドネシアの首都移転計画は政府の政治機能をカリマンタン島に移すことを念頭にしているとされており、どちらかといえばマレーシア方式と推定されている。しかし、マレーシアのクアラルンプールとプトラジャヤは隣接しており、道路、鉄道で密接に繋がっている。

ジャカルタのあるジャワ島とカリマンタン島では空路以外にアクセスはなく、両都市での政府機能分散で逆に効率が低下するとの懸念も出ている。

そもそもなぜカリマンタン島かというと、広大なインドネシアの国土で東西南北のほぼ中心部に当たり、内陸部は地震、津波、洪水、火山噴火、地盤沈下などの自然災害が少ない場所という地理的、自然環境的理由に基づくと政府は説明している。

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