最新記事

ロボット

世界が発想に驚いた日本の「ロボット尻尾」、使い道は?

Japanese Research Team Developing Robotic 'Tail' to Help Elderly People

2019年8月16日(金)17時20分
スコット・マクドナルド

発想の勝利? 高齢者がいつまでも自分の足で立ち続けるために尻尾が役に立つという Guardian News/YOUTUBE

<この発想はなかった、さすが日本、と世界中が感心したまったく新しいロボットとは>

慶應義塾大学の研究チームがロボットの尻尾(robot tail)を開発した。高齢者などが立ったまま姿勢を保つときなどに、バランスをとる助けをしてくれる。尻尾のない人間に尻尾のウェアラブルとは。7月末にロサンゼルスで開催されたコンピューター科学の国際会議「SIGGRAPH」に出品されるや、世界中で話題となった。

<参考記事>ロボットとセックスする新時代の大問題

ロイター通信によると、研究者チームが開発したのは「Arque」と呼ばれる約1メートルの機械。動物の尻尾とそっくりの動きをする。

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の「身体性メディア」プロジェクトの一環としてロボット尻尾を開発した大学院生の鍋島純一が、自らウエストにベルトでロボット尻尾を装着し、仕組みを説明している。

「この尻尾が振り子の役割を果たして身体のバランスが保てるようになっている」と鍋島は話す。「身体が片方に傾くと、尻尾はそれとは逆の方向に動く」

先進国のなかで最も急速に高齢化する日本だからこその発想だ。日本では、急速な高齢化に備える研究が盛ん。高齢者の健康を守ろうとするなかで出てきた研究の一つが、自分の足で立ち続けるためのロボット尻尾だ。

空気圧を利用して4つの人工筋肉を操り、8方向に動く。今後さらに細かい動きを再現するため、研究を続ける予定だ。

人工の尻尾は、高齢者はもちろん、バランスがくるって歩行が困難な病気の人にも有益だ。労働者にも活用してもらいたいと、研究者はいう。重い荷物を持ち上げて運ぶ仕事で、身体を安定させるためにも使えるようになるという。

鍋島は「人工尻尾の開発をさらに進めて、日常生活のちょっとした場面でも利用できるようになるのが理想だ」と述べた。

<参考記事>日本はもはやロボット大国ではない!?論文数で7位に転落

もっとも、尻尾を付けた高齢者が孫の顔を見たとき、嬉しさのあまり勝手に尻尾が動くのかどうかまでは確認できていない。

(翻訳:ガリレオ)

2019081320issue_cover200.jpg
※8月13&20日号(8月6日発売)は、「パックンのお笑い国際情勢入門」特集。お笑い芸人の政治的発言が問題視される日本。なぜダメなのか、不健全じゃないのか。ハーバード大卒のお笑い芸人、パックンがお笑い文化をマジメに研究! 日本人が知らなかった政治の見方をお届けします。目からウロコ、鼻からミルクの「危険人物図鑑」や、在日外国人4人による「世界のお笑い研究」座談会も。どうぞお楽しみください。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

焦点:ジャクソンホールに臨むパウエル議長、インフレ

ワールド

台湾は内政問題、中国がトランプ氏の発言に反論

ワールド

香港民主活動家、豪政府の亡命承認を人権侵害認定と評

ビジネス

鴻海とソフトバンクG、米でデータセンター機器製造へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 5
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 6
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    40代は資格より自分のスキルを「リストラ」せよ――年…
  • 9
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中