最新記事

宇宙

X線で記録した空の画像が、宇宙の見方を変える

2019年6月4日(火)17時00分
松岡由希子

中性子星観測装置NICERで観測された空のX線画像 NASA/NICER

<NASAが中性子星観測装置で夜間に記録した空全体の画像が公開された>

中性子星とは、質量の大きな恒星が進化の最終段階で超新星爆発した後に残された超高密度な天体だ。その一部は、パルサー(パルス状の可視光線や電波、X線を発生する天体)としてこれまでにも観測されている。高速で自転し、強い磁場を持っており、可視光線や電波、X線を発しているとみられるが、その大きさや内部構造、性質などについては、まだ完全に解明されていない。

国際宇宙ステーションに取り付けられた中性子星観測装置

アメリカ航空宇宙局(NASA)では、中性子星の大きさを精緻に特定するべく、2017年6月に中性子星観測装置「NICER」を国際宇宙ステーション(ISS)に取り付け、パルサーやその他のX線源を観測してきた。

NICER

「NICER」は、ISSが93分ごとに地球を周回する際、56台のX線望遠鏡を使って、太陽系に最も近い恒星のプロキシマ・ケンタウリなど、様々な天体を毎日追跡するミッションを担っているが、ISSで太陽が沈み、夜になると、検知器を稼働させた状態で、ターゲットとなる天体を次々と移動させている。このような夜間の観測活動は、軌道を1周するごとに最大8回起こるという。

NASAは、2019年5月31日、「NICER」が22ヶ月にわたって夜間にX線で記録した空全体の画像を公開した

matuoka0604c.jpgNASA/NICER

弓なりに広がる弧線は「NICER」が夜間移動の際にとらえたX線やエネルギー粒子からの衝突である。画像に明るく映っている箇所はこれらの要因のほか、「NICER」がその方向を見ていた時間の長さによるものだ。画像では、「NICER」が定期的にモニタリングしているX線源の場所が明るい点で示されており、ここに弧線が集中していることもわかる。また、ターゲットとなる天体の間を「NICER」が同じ軌道で追跡するため、より目立った弧線が形成されている。

夜間の観測で新たなX線画像が構築されつつある

NASAゴダード宇宙飛行センターのキース・ジャンドロー博士は、この画像について「最小限の画像処理でも、およそ90光年離れた超新星残骸のはくちょう座ループが確認できる」と評価し、「『NICER』の夜間の観測活動によって、空全体を映す新たなX線画像が構築されつつあり、これまで未知であったものの解明につながるだろう」と期待を寄せている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

パキスタンがアフガン空爆、子ども9人死亡 タリバン

ワールド

日米首脳が電話会談、日中関係の悪化後初めて 高市氏

ワールド

パレスチナ、過去最悪の経済崩壊 22年分の発展が帳

ワールド

中国の新規石炭火力許可、25年は4年ぶり低水準に 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中